28年の稼働で出力低下は6.43%

 さらにIECにはない試験項目を追加している。例えば、繰り返し風圧試験と呼ばれるもので、強風時に太陽光パネルが大きく反り返っても異常がないことを検証するため、荷重試験器で「押し付け」「引っ張り上げ」などを繰り返す(図5)。これはもともと同社でも独自に実施していたが、負荷の強さや繰り返し数に関してVDE独自基準を取り入れた。このほか、太陽光と同じ1kW/m2の光を数カ月間、太陽光パネルに当て続け、出力などの劣化を検証する「光照射試験」(図6)、雪が積もって滑り落ちる際の耐久性を検証する「滑雪負荷試験」、セルの不良や影によっておこるホットスポットを意図的に発生させる「ホットスポット温度上昇試験」など、いずれもIECにはない検証項目を加速劣化試験の一つとして導入している。

図5●繰り返し風圧試験を実施する荷重試験器
(出所:日経BP)
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図6●太陽光と同様の光を当て続ける光照射試験器
(出所:日経BP)
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 加速劣化試験は、新製品の開発時や部材の変更などに伴い実施するほか、生産工程に立ち入り、定期的に抜き取り検査を行っている。こうした生産工程の監査は、設計通りの品質を生産工程で忠実に再現できているかという「製造品質」の確認に重要なものだ。実は、VDE独自基準の特徴は、「IEC基準より厳しい加速劣化試験に加え、3カ月に1度、20台の抜き取り検査という多頻度の定期検査を課すことで製造品質を維持すること」と、VDEグローバルサービスジャパン(大阪市中央区)の西村英生社長は強調する。シャープのVDE認証製品に関しても、こうした頻繁の抜き取り検査を実施することになる。また、シャープでは、ハンダ付けの不良などは、抜き取りによる加速劣化試験後に出力特性を検証しても見付けにくいため、定期的にパネルを切断してハンダ付けの断面を確認しているという。「海外などの協力工場に生産を委託している場合も、こうした生産工程監査が重要になる」(吉岡秀起 品質・環境統轄)。

 こうした品質管理の結果、設計品質と製造品質が規定通りに達成された場合、太陽電池パネルは20年間、稼働した後、どの程度、劣化する可能性があるのか。壷阪寺の太陽光パネルを分析した結果、28年稼働時での出力低下は6.43%だった。シャープでは、壷阪寺などの太陽光パネルに使われている、セルやバックシート、封止材など、主要な4つの部材について材料ごとの劣化状況も調べた。その結果、それぞれが最も劣化が激しい場合、20年の稼働で出力が13%低下する可能性があるというシミュレーション結果になった。「20年で13%の出力低下は最悪の場合で、実際のフィールドでの実績では20年稼働で5~6%の出力低下に留まっている。壷阪寺の28年で6.43%という出力低下もそれを示している」と吉岡秀起 品質・環境統轄は言う。こうした検証結果を見ると、固定価格買取制度を前提に設置した太陽光発電システムは、適切に設計・製造された太陽光パネルを採用していれば、20年後にも十分な発電性能を維持していると言えそうだ。