加速劣化試験そのものがノウハウ

 シャープは、VDEに対して独自の品質評価規格をすべて公開して評価を受けつつ、VDEが定める「繰り返し風圧試験」や、モジュール間を接続する端子(ケーブル)の接続強度を検証する「端子強度試験」などを取り入れた。シャープ独自の品質評価規格のうち、VDEから特に評価の高かったのが、加速劣化試験だ。「再現性の高い加速劣化試験を策定するには、太陽光パネルを実際に長期間、フィールドで稼働した場合の劣化状況を詳しく評価し、その状態を再現できるような条件を見つけ出すという作業が不可欠だ。早くから太陽光パネルを商品化し、長期間、使用した場合のデータを持っていることが大きな強みになる」と吉岡秀起 品質・環境統轄は話す。シャープでは、約30年間、稼働し続ける壷阪寺のほか、千葉県銚子市の日本ウェザリングテストセンターに設置し、約20年間、稼働する出力4kWのシステムや、1986年に兵庫県六甲アイランドでNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業により、70Wの太陽光パネルを80枚設置している例などがあり、フィールドでの劣化状態を分析するためのデータを収集しているという。

 「こうした劣化データを基にした加速劣化試験そのものがノウハウなので、外部には詳しい内容を公開していない」(吉岡秀起 品質・環境統轄)が、その一端は、次のような試験だ。温度負荷に関してIECでは、6時間以内に-40℃~85℃の変化を1サイクルとして、200回繰り返すことと規定しているが、シャープでは-40℃~90℃に厳しくしてサイクルを増やすなど、IECの10倍相当の試験回数を規定し、運用している。また、結露凍結を想定した湿度負荷に関しては、IECでは24時間以内に-40℃~85℃、湿度85%を1サイクルとして10回繰り返すことと規定しているが、同社では繰り返し回数を10倍相当と規定し、運用している(図4)。これらに関しては、VDE独自基準があるが、VDEと連携後も、シャープの従来基準を継続している。

図4●結露凍結を想定した高温高湿の環境を作る装置
(出所:日経BP)
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