京都大学の内田祐介氏
京都大学の内田祐介氏
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きちんと身体にあたっているかどうかを色で表現する
きちんと身体にあたっているかどうかを色で表現する
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 第32回医療情報学連合大会(第13回日本医療情報学会学術大会、主催:一般社団法人 日本医療情報学会)で、地域医療連携・遠隔医療での活用を目指して開発中の技術に関する発表があった。その一つである、MR技術を用いた聴診に関するシステムについて、京都大学の内田祐介氏が報告した。

 MRは、Mixed Realityの略称で、複合現実感などと訳される。現実をベースに仮想的な物体を追加するAR(augumented reality)、仮想空間をベースに現実の物体を追加したAV(augumented virtuality)は、MRの一種である。このMR技術を活用し、ネット会議システムを通じた医師の指示を基に、患者側で適切に聴診器を使ってもらうことで、「遠隔聴診」を実現しようとするのが、このシステムだ。

 聴診を遠隔で実施する際は、聴診したい位置を正確に伝えられるかどうか、聴診器の接触が一定・均一であることを医師が確認できるかどうか、患者の呼吸状態を確認できるかどうか、といった点が課題となっている。今回のシステムでは、患者宅と医療施設に端末を置いて、いくつかのセンサーを使用する。

 まず、聴診位置の指示については、患者宅で聴診用のカメラで撮影した胸部の映像を見ながら、医師がMR技術を使って画面上に位置を指示する。それを見て、家族や訪問看護師、ヘルパーなどが聴診器を身体に当てる。聴診器には、1ミリ程度の厚さの布状の接触センサーを周囲に4カ所取り付け、中央に位置・姿勢検出用マーカーを配置している。

 「これらのセンサーやマーカーが測定した圧力の程度を色に変えて、画面上に表示する。青(圧力がかかっていない状態)から緑、黄色、赤(十分な圧力がかかった状態)となっている」(内田氏)。呼吸の状態を計測するバンド型計測器は、センサーが胸部に来るように身体に巻き付けて利用する。今後、京都大学の互いに離れたキャンパス間で、医師の協力を得て実証実験を実施する計画だという。