FileMaker連携を電子カルテベンダーの立場からサポート

 長年運用してきたFileMakerで開発した診療支援システムを生かしたい……。電子カルテ導入に際しても、従来のシステム資産を継承できることが最大のポイントだった。そのため、FileMakerとデータ連携できることを、電子カルテシステム導入の条件とした。「電子カルテの選定においては、3社のパッケージを評価しました。総合評価方式で富士通のHOPE/EGMAIN-GXを採用しましたが、FileMaker連携をベンダーとして責任を持って実現するとベンダーのSEが断言したことが、決め手の1つでした」(櫃石氏)と採用の経緯を強調する。他の2社とも、データ連携に関しては「できる限り対応」という姿勢であったのに対し、それまでのFileMaker連携の実績を基に必ず連携させるという意志を表明したという。

 「富士通は、名古屋大学病院でのFileMakerと電子カルテのNeoChartとの連携実績を積んでいましたので、ユーザーのニーズに応えていくために、そのノウハウを活かして連携モジュールの開発に取り組むことに賛同してもらいました」と櫃石氏は当時の状況について話す。

名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター長の吉田茂氏

 FileMakerと富士通の電子カルテのデータ連携は、これまでも様々な方法で実現されている。吉田氏はそうした事例の中で、『名大方式』と呼ばれる連携方式はベンダーとユーザーの責任分界点を明確にしやすい連携方式だと指摘する。「両者が連携するデータの種類・仕様を決め、電子カルテ側はそれに基づいてデータを抽出し、FileMaker側はユーザーの責任で取り込む仕組みを開発するもの。連携しやすく、汎用的な方式としてEGMAIN-GXユーザーに横展開できるモジュールを開発したことが、大きな特徴です」(吉田氏)という。

 加古川東市民病院で実現したFileMaker連携では、大きく2つの方法がとられている。1つは患者基本情報などを電子カルテ側から定期的(数分間隔)にCSVファイルで書き出し、それをFileMaker側で取得する方式。もう1つが、FileMaker側で必要とするデータを、電子カルテのデータベースの仕様をオープン化することで、SQL連携で直接取り込む方法である。データベース構造は、情報の真正性担保のためのベンダーとしての責任から機密扱いであることが多い。そのため後者の連携方式は、同病院との契約に基づいて個別に情報提供される形で行われているという。

 ちなみに同病院で開発された連携機能(FileMaker連携常駐プロセス)は、その後、製鉄記念広畑病院(兵庫県姫路市)のEGMAIN-GXとFileMakerの連携運用でも利用されている(関連情報はこちら)。