がん登録からデータ活用まで見据えたシステム体制を構築

 順次開発されたシステムは、院内がん登録標準項目に準拠した「CCHospital」、地域がん登録標準項目に準拠した「CCHos-mini」、生存確認のために住基ネットと連携する「CCVital」、地域がん登録の統計情報をWebで提供する「CCInfo」などである(図2参照)。「大阪府全体のがん登録・データ活用を見据えたとき、院内がん登録・地域がん登録作業の効率化と精度向上の支援、がん統計の可視化や効率的な利活用を可能にする一連のシステムが必要と考え、順次開発してきました」(井岡氏)。これらのシステムは、地域がん登録標準DBSの実際の開発・提供に携わっている一般社団法人 がん統計センター(広島市)と共同開発され、各医療機関や自治体への提供・サポートも同センターで実施されている。

 CCHospitalとCCHos-miniは、院内がん登録支援のためのシステム。前者は院内がん登録標準49項目に対応し、入力・登録機能に加え集計表作成機能や生存確認調査機能も実装。後者は地域がん登録標準25項目に対応し、入力・登録機能と一部の集計表作成機能を備えている。CCHospitalについては導入医療機関に年間保守費(20万円)の負担が必要(導入費は無料)。府内の医療機関についてのCCHos-miniの導入・保守費については無料である。

 CCVitalは、地域がん登録の中央登録室において、生存確認調査を住基ネットのデータを利用して行うための連携システム。「大阪府の地域がん登録では、2011年度より生存率を算出するために住基ネットと連携した生存確認調査を行っています。住基ネットと標準DBS間では、データのインポートおよびエクスポートが容易にできません。標準DBSからエクスポートされる対象者ファイル(CSV形式)を住基ネットのインポート用ファイルに変換する機能と、住基ネットからエクスポートされる結果ファイルを標準DBSのインポート用に整理・変換するための機能を備えているのが、CCVitalです。これにより調査対象者の約8割の生死情報が取得でき、効率的な生存確認調査が可能です」(井岡氏)という。

大阪府における効果的ながん対策の実現に向けたがん登録関連システムの全体像
[画像のクリックで拡大表示]

 がん登録資料活用のためのCCInfoは、がん統計値とがん検診の精度管理指標を、Web上で大阪府/二次医療圏/市区町村ごとにわかりやすく図示し(年代や部位ごとなど)、府民に対して情報提供するためのシステム(「統計でみる大阪府のがん」)である。

 「地域がん登録は、その目的であるがん対策のための進捗評価を高い精度で行い、その情報をわかりやすく地域住民に還元することが重要です。データ活用まで見据えたシステム体制を各自治体で構築してもらうため、一連のシステムが全国に普及してほしいと思っています」(井岡氏)と希望する。