電子カルテやサブシステムとの連携により自動登録を実現

 製鉄記念広畑病院の院内がん登録システムの最大の特徴は、電子カルテシステム(HOPE/EGMAIN-GX)やFileMakerによるさまざまなサブシステムと連携することで、病院全体の診療情報から抽出したデータにより、ほぼ自動的に登録が行われている点である。患者の基本情報をはじめ、病名、入退院、手術、DPCなどの情報が、電子カルテなどに入力・更新された時点で、リアルタイムに癌患者台帳のデータベースに転送されてレコード生成される。治療内容以外のほぼ8~9割の項目が、自動的に登録されるという。

 「一般的な病院で診療情報から特定の疾患グループにおける罹患者を抽出することは極めて難しく、サブシステムなどのデータベースでも手入力に頼らざるを得ない状況でしょう。当院では、癌登録台帳のバックエンドで動いている仕組みにより、100%に近い罹患者の抽出が可能になっています」(平松氏)

 癌患者台帳システムにデータを自動登録する際の特徴の1つは、項目によっては複数のシステムの情報を突合して登録している点だという。例えば、病名情報は診療初期の電子カルテ上では確定診断ではなく、「○○がんの疑い」で記載されている。そのため、「その後の確定病名、およびDPCデータの病名情報と突合することにより、“信用できる情報”として病名項目に登録する」(平松氏)。

 具体的には、電子カルテシステムとFileMakerをソケット通信で接続する「KP Sync」と呼ばれるソフトにより、DPCデータ管理システムにデータを生成。その中の病名(ICDコード)に悪性新生物に関するコードを検出した場合に、癌患者台帳システムに登録する仕組みになっている。死亡・生存情報も、複数システムのデータから、信頼性の高い情報を元に予後情報を登録するという。

 病院全体のがんの実態把握として、ほとんど漏れなく登録されるようになった癌患者台帳システム。がん診療の質の向上とがん患者の支援をめざして開始した院内がん登録だが、平松氏は「データの活用という点ではまだまだ十分とは言えません」と言う。「FileMaker上に蓄積されたがん情報から、生存率の分析も容易にできます。がん診療状況の公開や臨床ベースでの院内活用を、今後推進していきたいと考えています」(平松氏)と述べる。


■病院概要
名称:社会医療法人製鉄記念広畑病院
住所:兵庫県姫路市広畑区夢前町3丁目1番地
診療科:内科、循環器内科、小児科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、リウマチ科、リハビリテーション科、救急科
病床数:392床
職員数:約700人(うち常勤医師70人)
Webサイト:http://www.hirohata-hp.or.jp/
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」