2005年に本格運用を開始したFileMakerによるシステム

 平松氏が自らがん患者台帳ソフトを開発したのは、1980年代。「当初はさまざまなツールを使ってきましたが、FileMakerの登場で開発・使い勝手の良さから前任地で、現在の『癌登録台帳』システムの前身となるソフトを開発・運用。9年ほど前に当院で院内がん登録を実施することになり、大幅な改修を経て現在に至っています」(平松氏)と開発経緯を振り返る。そのシステム改修は、国の第3次対がん10か年総合戦略(2004年)の中で院内がん登録を推進することに伴い、厚生労働省研究班によって院内がん登録標準項目が示されたのを受け、準拠するよう対応させたものという。

 製鉄記念広畑病院は国指定のがん診療連携拠点病院でないため(兵庫県指定のがん診療連携拠点病院)、指定要件の1つである「院内がん登録、データの提供」は課されていない。そのため、国立がん研究センターがん対策情報センターが実施する全国集計へのデータ提供は行っていない。しかし2004年から病院全体のがん診療の実態を把握し、がん診療の質の向上とがん患者の支援をめざして院内がん登録を開始し、同時に地域がん登録に協力してきた。その実現にFileMaker版院内がん登録システム「癌患者台帳」が寄与してきた。2005年の本運用以降、さかのぼっての登録を含めて9000件を超えるがん患者の情報が登録・管理されている。

 癌患者台帳システムは、院内がん登録標準登録項目である基本情報、診断情報、腫瘍情報、初回治療情報、予後情報など49項目を網羅。台帳画面は、「基本」「診断検査」「病理診断」「外来入院」「治療」「手術療法」「化学療法」「放射線療法」「予後」などを、それぞれタブ画面で記録する構成をとっている(画面参照)。

自動的にレコード生成されるがん患者一覧画面
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患者の基本情報、来院経緯、告知状況などを記入する基本画面
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診断日や診断根拠を記入する診断検査画面
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病期(UICCによるTNM分類および進展度)、部位・組織型などを記入する病理診断画面
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手術や化学療法など、詳細情報を参照しながら記入する治療画面
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死亡日・死亡情報などを入力する予後情報画面
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院内がん登録を担当する診療情報管理士の診療事務部医事課 関本須美氏

 項目入力の簡便さを実現するために、さまざまな工夫がされている。特に「病理診断」タブの腫瘍の「部位」、腫瘍の分化度や組織構築の特徴を付記した「組織型」の入力では、部位を選択すると、その部位に対応する組織型群のコードが表示されるため、容易でミスの少ない入力が可能という。また、手術台帳や化学療法管理システムと連携しており、治療に関する入力時には、詳細な情報を参照しながらチェック項目を選択できるようになっている。

 現在、院内がん登録業務は、診療情報管理士である診療事務部の関本須美氏が一人で担当している。「他の院内がん登録ソフトを使用したことがないので比較はできませんが、ユーザーインターフェースがわかりやすく、入力も簡便でとても使いやすいと感じています」(関本氏)と評している。