エムシス代表取締役 秋山幸久氏
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東京都立広尾病院小児科医長 山本康仁氏
東京都立広尾病院小児科医長 山本康仁氏
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札幌医科大学医学部神経内科学講座助教 齋藤正樹氏
札幌医科大学医学部神経内科学講座助教 齋藤正樹氏
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DBPowers代表取締役 有賀啓之氏
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泉南新家クリニック透析センター情報管理士 田代庸平氏
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国士舘大学大学院救急システム研究科教授、体育学部スポーツ医科学科教授 櫻井勝氏
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ABCRescue幹事長 板垣毅氏
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イエスウイキャン システムコーディネーター 有賀和也氏
イエスウイキャン システムコーディネーター 有賀和也氏
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富士通システムズ・ウエスト公共BGヘルスケアシステム本部第一システム事業部第二システム部 沼澤功太郎氏
富士通システムズ・ウエスト公共BGヘルスケアシステム本部第一システム事業部第二システム部 沼澤功太郎氏
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葵鐘会副理事長 吉田茂氏
葵鐘会副理事長 吉田茂氏
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 ファイルメーカーは、11月27日~29日の3日間、東京コンベンションホール(東京都中央区)で「FileMakerカンファレンス2013」を開催した。最終日のメディカルトラックでは、FileMaker開発ベンダーなどと医療従事者が共同開発した医療ITソリューション事例が紹介された。

 エムシス代表取締役 秋山幸久氏は、日本外来小児科学会電子カルテ検討会のプロジェクトで開発されたFileMakerベースの電子カルテソリューション「ANNYYS_Developer版」の概要と技術要素、今後の展開について紹介した(関連記事:診療支援から介護連携まで、ユーザーメードで様々な要求を満たす)。特徴の1つとして、佐賀記念病院総合診療科での導入において、様々な診療科の医師ごとに使いやすいユーザーインタフェースを提供していること、初めての利用者でも20分程度の操作説明で使える電子カルテであることを強調した。

 また、ANNYYSプロジェクトメンバーの1人である都立広尾病院小児科医長 山本康仁氏は、「ANNYYS_D版は、建物に例えるならば居抜きの物件ではなく、スケルトンだと理解してもらえればいい。自分の色に染められる電子カルテである」と説明した。

 札幌医科大学医学部神経内科学講座助教 齋藤正樹氏とDBPowers代表取締役 有賀啓之氏は、紙による「あんしん連携ノート」とFileMakerシステムを効果的に組み合わせた北海道の広域医療連携体制構築の取り組みについて紹介した。「あんしん連携ノート」(A5判ノート)は、母子健康手帳をモデルとしたもの。脳卒中や急性心筋梗塞患者の病態、特徴、治療方針を患者、専門医、かかりつけ医で共有し、一貫性のある医療と生活の管理や生活習慣病リスク管理を行うことで再発予防に役立てることを目的とした地域連携パス。現在、脳卒中あんしん連携ノート、急性心筋梗塞あんしん連携ノートが配布されている。

 齋藤氏は、「あんしん連携ノートとITシステムを組み合わせることにより、ノートがきちんと運用されているか管理し、関係医療従事者の情報共有促進が可能になった。特に、全道各地域のデータの統合と参照が可能になり、連携医療の遂行管理と評価管理、広報・情報共有などが進展した」と述べた。

 システム構築を担当した有賀氏は、FileMakerを採用した理由について、「医療従事者にプロトタイプを作成・提示し、短期間でシステムの方向性を示すことができるRAD(Rapid Application Development)ツールとして、またその際のデザインツールとして、FileMakerは優位性がある。データベースの機能に加えて、Webサーバーと容易な連携が可能な点は、クライアントソフトの展開・管理が難しい広域で多様な組織が利用するシステムを構築することに大きなメリットがあった」と説明した。

 泉南新家クリニック透析センター情報管理士 田代庸平氏は、進展しない透析医療のIT化を容易に実現する、自ら開発したiPadを利用する透析業務支援システム「dottoHD」を紹介した(関連記事:泉南新家クリニック(大阪府泉南市):自院で開発した透析業務支援システムを無償提供)。

 田代氏はdottoHDのコンセプトを、透析医療における“一番小さな歯車”と表現。「透析業務を回すのは、医師をはじめとするスタッフ。そのスタッフを少しでも円滑に回せるように支援する、小さな歯車のシステムであるべきと考えて開発した」と説明。従来の透析システムの導入が進展しない課題を踏まえ、低コストで使いやすく、iPadと連携したベッドサイドでのリアルタイム業務処理が可能なシステムを目指した。また、最新の透析条件を患者の要望に合わせてカード、PDF(またはCSV)ファイル、メールへの転送といった方法で提供し、災害時の透析実施に対応できるといった特徴も挙げた。

 国士舘大学大学院救急システム研究科、体育学部スポーツ医科学科教授 櫻井勝氏、応急手当講習・スポーツイベント救護サポートなどの活動を行う非営利団体のABCRescue幹事長 板垣毅氏、イエスウイキャンシステムコーディネーター 有賀和也氏の3氏は、スポーツ救護活動を支援するiPhoneとFileMakerによるシステムを構築し、富士山マラソンでの実際の運用について紹介した。

 櫻井氏は、スポーツにおける心臓突然死リスクについて説明し、発症時におけるAED(自動体外式除細動器)の有効な活用を強調した。「マラソンは、心肺停止状態に陥る危険性の高いスポーツ。スポーツでの心肺停止の約2割を占め、圧倒的に多い」と説明。心肺停止から心肺蘇生を実施するまでの時間が1分伸びるごとに、急速に救命の可能性が減少していく、という。

 「AEDを早い段階で使用すると救命率は高く、そのゴールデンタイムは約5分以内といわれている」と説明。マラソン救護のポイントは、どの地点で心肺停止の傷病者が発生しても、AEDを携行した救護班が3分以内に到着し、4分以内に実施することが重要だとし、これを基本として主催者と共同で救護計画を構築していると述べた。