患者情報を一画面に収録、閲覧性・視認性・操作性の高いツールに

 院内業務支援システムの最大の目的は、患者の基本情報(属性情報)、病歴、検査データ、透析指示データや定期処方など透析関連情報を一元管理すること。「患者さんの情報を一画面に収まるように整理して、閲覧性の高いレイアウト重視の開発を行いました。日常業務で利用するのは透析室の看護師や臨床工学技士なので、操作に慣れていなくても直感的にデータに行き着けるように、タブなどを利用してユーザーフレンドリーな操作性と視認性を高める工夫をしました」と、吉田氏は画面設計の容易さもFileMakerの優位性のひとつと説明する。

患者情報は一画面で表示できるよう工夫されている。透析条件や注射・処置は基幹システムから取り込む。
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定期的な血液検査データの画面。尿素窒素(UN)やクレアチニン(Cr)の透析前後の除去率、標準化透析量(Kt/V)などは自動計算されて表示される。
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 吉田氏の言葉の通り、全体的に見やすいレイアウトになっている。メインとなる「患者基本情報」画面では、原疾患・透析歴・住所・連絡先、現病歴・既往歴・アレルギー・禁忌情報、家族構成・日常生活動作・日本透析医学会(JSDT)統計調査提出用データなどの基本情報が3つのタブに表示される。その他の介護保険情報、保険証情報、転帰・他科受診・入退院歴、中間サマリー、看護計画などは、それぞれのタブに表示される。

 また、検査データも定期的な血液検査、不定期に行われる検査、フェリチン(貯蔵鉄)や透析アミロイドーシスの原因物質であるβ2-ミクログロブリン、インタクトPTH(カルシウムを調節するホルモン)などの検査データは、特殊検査として別々のタブで表示される。血液検査データの中には、透析効率をみる尿素窒素やクレアチニンの除去率、尿素などの小分子量の老廃物除去の度合いを示す指標である標準化透析量(Kt/V)などは、フィールドに計算式を埋め込んであり、自動的に算出・表示ができるようになっている。

シャント管理の画面ではシャントの創設、再建履歴などの他、シャント図には写真を添付できる。
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フットケア経過の入力にはテンプレートを利用して、できるだけ簡潔な入力ができるようになっている。
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 こうした患者基本情報、透析スケジュール、定期的な血液検査、透析条件などのデータは、基幹システムで管理されている。朝夕の2回、ODBC接続された基幹システムから透析予約ファイルを取得して、FileMaker院内業務支援システムの患者マスターに反映する。「医師の指示変更や定期処方情報についても、基幹システムから取り込めるよう調整中。データの手入力作業がさらに省力化され、業務効率はより向上します」(吉田氏)と話す。

 院内業務支援システムで管理しているのは、日常的な透析業務データだけではない。フットケアを実施している患者の記録や看護計画の管理、透析装置管理や輸液ポンプ、シリンジポンプ、心電図モニターなどの医療機器管理もFileMakerで行っている。透析機器管理で消耗品交換履歴や修理履歴、医療機器管理で保守点検記録も管理できるようにするなど、データベースをフル活用している。

透析装置や医療機器管理もFileMakerで実現。作業履歴や消耗品交換履歴、修理記録なども同時に管理する。
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 「このような機器管理データベースの構築に加え、患者基本情報の各テーブル、レコードからのデータを利用し、診療情報提供書や透析条件表、災害時用透析患者カードなど様々なドキュメントや帳票を、現場のニーズに応じて容易に作成できる点が、FileMakerを使う大きなメリットとして挙げることができます」(吉田氏)。

災害時用の透析者カードなどの帳票作成も患者情報から容易に手間なくできるようになった。
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