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eラーニングの画面例

 画像診断のeラーニング――。このようなサービスを今、NPO法人のメディカル指南車が展開している。自宅や教室、職場など、インターネット環境とパソコンがあれば、いつでも画像診断の学習ができるシステムである。同システムの開発背景や特徴などを探ってみた。

「紙の限界」を打破

 2012年5月に実証実験を始め、同年11月に運用を開始した「読影指南L」が、その画像診断のeラーニング・システムだ。利用料は月額にすると500円(半年ライセンス3000円、年間ライセンス6000円)。システム構築にはコニカミノルタもかかわっているという。このシステムはどのような背景から開発されたものなのだろうか。

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画像診断の教科書の例

 「放射線科専門医(読影医)はこれまで、症例が掲載されていた本を使って画像診断の勉強をしていた。しかし、紙には紙の限界がある」。メディカル指南車の理事を務める大阪大学医学部附属病院 医療情報部 部長 教授の松村泰志氏は、このように語る。

 紙の教科書は、読み込むのに労力が掛かり、画像の質が悪いことも多いという。一方、デジタル画像はズームや移動も容易であり、すみずみまで画像を確認できる。しかも、簡単に新たな症例の画像を追加することもできる。何より、今の臨床現場では症例のデジタル画像をモニターで見るのが当たり前になっている。このため、eラーニングによるデジタル画像での学習は、紙に比べてより臨床に近い環境で学習できるというわけだ。

一般医の学習も必要な時代に

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大阪大学医学部附属病院の松村氏(左)と三原氏(右)

 メディカル指南車がeラーニングによる学習システムが必要と考える背景は、決してそれだけではない。特に無視できなくなっているのが、放射線科専門医の不足という現実である。画像診断装置の進歩によって、画像診断の重要性や読影する画像の枚数はますます増加するばかり。こうした中、「一般医が読影せざるを得ない状況が出てきている」(メディカル指南車の運営委員を務める大阪大学医学部附属病院 医療情報部 副部長 准教授の三原直樹氏)という。そこで、放射線科専門医以外でも手軽に自己学習できる仕組みが有用であると同氏は強調する。

 手軽に自己学習できるシステムであれば、一般医に限らず、画像診断の基礎知識を学びたい学生や研修医の利用なども見込まれる。さらに、「放射線科領域で画像を撮影する技師にとっても有用だ」と三原氏は語る。放射線科専門医が画像をどのように診断するのかを知ることで、適切な画像を撮影したり、専門医が診断する際のサポートができるようになったりするからだという。