日本に不足するのは規制でなくトラックレコード

――技術革新というと、北海道電力が示したように、大型の蓄電池を併設する方向に進みがちのように見える。しかし、蓄電池はコストが高い。蓄電池なしで最適に制御する方法も模索すべきではないか。

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課の村上敬亮課長(撮影:清水 真帆呂)
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村上 その一つに、現在、予算を要求しているシミュレーションがある。北海道電力が想定している出力抑制と蓄電池の併用に加えて、気象情報を加えたシミュレーションによって、年間での出力抑制予想量を算出するものである。

 発電事業者にとって、出力抑制すること自体よりも、出力抑制される容量が予想できないことが事業計画上、困る。こうした状況に対応するものである。

 例えば、ドイツでは、買取価格の決定時期は、運転開始時期までわからず、任意の時期に出力抑制するといった環境にありながら、太陽光発電や風力発電が多く導入されている。その背景には、発電事業者と金融機関の両者が、投資の可否を判断できるだけのトラックレコード(金融投資商品の収益実績の履歴)を蓄積できているからである。日本に不足しているのは、こうしたトラックレコードであって、規制ではない。

――今後、農地転用によって、田畑の上に太陽光パネルを設置し、農業を続けながら売電事業を実現できるソーラーシェアリングなども、進展が期待される分野である。

村上 大きな課題だと認識している。課題は大きい一方、農林水産省が前向きな姿勢で取り組んでおり、期待している。この12月に閉会した臨時国会では、農山林地域における再生可能エネルギーの導入促進に関する法律が成立した。農水省は、この法律の成立を前提に、政省令で、農地転用を要件緩和すると聞いている。

――今後、出力50kW以下の分譲型の太陽光発電所が増えていきそうである。低圧の送電線に接続でき、その手軽さから、投資対象として発電事業とは縁遠い事業者が参入してくることが想定される。こうした形態に課題はないか?

村上 保安規制当局が、規制逃れになるのではないかという観点から、運用の見直しを検討していると聞く。発電所の規模に応じて安全管理が規定されているが、本来はより大型の発電所としての安全管理の対象となるべきものを、50kW以下に分譲することで、その義務を逃れる手法については、違法性の疑いが高く、その解釈をどこまで埋めていくのかがカギとなる。

 さらに、心配しているのは、こうした低圧で連系している小規模な発電事業者は、まったくの異業種参入組が多く、粗悪な設置工事で建設しているケースを含んでいる疑いがあることである。これが最大の懸念である。