経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課の村上敬亮課長(撮影:清水 真帆呂)
[画像のクリックで拡大表示]

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行されてからの約1年半、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の計画や建設ラッシュが続いている。前回に引き続き、再生可能エネルギーを推進する立場にあり、同制度を所管する経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課の村上敬亮課長に現状の分析や今後の課題などを聞いた。

――北海道に続いて、12月には沖縄本島でも、一定規模以上の太陽光発電の系統電力網への接続に限界があることを発表した。今後、メガソーラーの建設が活発な九州なども心配だが、同様の事態が起きる可能性はあるのか。

村上 九州に限らず、北海道と沖縄以外の各地域では、離島を除けば、当面、電力会社の管内全体の接続可能量が限界に達する見通しはない。

 ただし、このような、電力会社における管内全体の電源構成や需給バランスというマクロの問題とは別に、メガソーラーの発電電力を逆潮流させる送電網の設備容量が不足しているというミクロの問題については、地域によっては問題が生じている例がある。

――ミクロの問題とは、メガソーラーによる逆潮流によって配電網の電圧が上がり、バンクと呼ばれる配電系統から変電所を越えて上流の送電系統に電流が逆方向に流れてしまう、「バンク逆潮流」のような問題を指すのか。

村上 バンク逆潮流という現象は、従来の電力系統では想定していなかった。配電用の変電所をまたいで、電気を上流の系統側に流すことになるために、開閉器や電圧調整器、安全装置の設置などに必要な投資額を電力会社ごとに算出し、ワット当たりの単価を、逆潮流させようとする発電事業者が負担する仕組みを整備した。

 これによって、メガソーラーが集中しているバンクから、上流の系統側にバンクで受け入れきれない分の電気を逃がすことができ、受け入れ可能な再生可能エネルギーの容量の増加につながる。

 これもミクロの問題の一つだが、一部の地域で起きているのは、バンクから逆潮流させた先の上流の系統の受け入れ可能な容量の不足である。電力を多く使う消費地が限られている地域にありがちなことである。

 こうした地域では、歴史的に長い送電線を最小限の本数だけ敷設する傾向があり、バンク逆潮流によって受け入れ可能な容量を超えてしまい、その対応として送電線の張り替えまで必要になり、そのための費用として、電力事業者が十億円単位の負担を求められたことで、建設をあきらめる状況が一部で生じている。

 逆潮流を必要とするバンクについては、ある程度、見通すことができるが、その上流の系統のどの送電線が不足するのかを見通すことは難しい。このために、バンク逆潮流のような設備投資額を単価制で負担する仕組みの導入は難しい。

――もし、こうした問題が現実に発生して、それでも建設をあきらめない場合、発電事業者がその投資額を負担することになるのか。

村上 電力会社の主張通り、送電線の増設が本当に必要なのかの検討をはじめ、さまざまな手法を模索している。例えば、最初にその逆潮流を希望する発電事業者が全額を負担し、次に希望した発電事業者がその1/2を、三番目に希望した発電事業者がその1/3を、といったようにそれぞれが負担し、そのたびに電力会社が払い戻し調整をする方法もある。この方法は、かつて現実に使われたことがある。このため、実現できない方法ではない。

――発電事業者にとって、系統の電圧の上昇を抑制するために生じる無効電力(力率制御)もある。買い取りの対象外となる電力で、一種の出力抑制となる。

村上 これは仕方がないことで、当たり前である。元々、送電線は、家庭や企業などの末端の電力利用者に電力を届けるために作られた設備である。もし、逆潮流させるのに十分な送電線が確保されていたとしたら、それは従来が過剰設備で、電力料金を取りすぎていたということになる。

 特定の発電事業者にしかメリットがない送電線を新たに敷設し、その負担を電力会社が負うのはおかしい。そのための費用を電力会社に課せば、電力料金に影響し、管内の全電力利用者の負担につながるからである。受益者が明確に特定されている送電線ならば、発電事業者が自ら負担すべきである。

 そもそも、接続費用は固定価格買取制度の積算根拠に含めており、発電事業者がこうした件で不満を表明するのは筋違いである。むしろ、電力会社は、既存の送電網の設備のまま、さまざまな工夫をして受け入れている。