20年間使用しても、70~80%の出力を維持するパネルもある

――そうした検査によって、使用して時間たった太陽光パネルにはどのような特徴が見られるのか。

 新品のパネルでは、所定の出力値になるようにセルの組み合わせを揃えるため、同じ型式ならほぼ同じ出力値になる。だが、中古の場合、同じメーカーの同じ型式であっても、出力値が異なる。パネルによって出力低下の度合いが異なるからだ。ただ、こうして使用済みのパネルを検査してきた経験から、まず言えることは、20年間使用したパネルであっても、初期の出力値に比べ70~80%の発電性能を維持しているものが相当数あるということだ。

 ということは、いまの固定価格買取制度(FIT)の下で20年間使用して、減価償却が済んだ後は、極めて安いコストで発電できるということになる。我々の試算では、40年間継続して使用すれば、太陽光パネルの発電コストは1kWh当たり10円程度になる。20年後に買取価格がどうなるかは分からないが、仮に買取制度がなくなったとしても、発電電力を自分で使うだけで経済メリットが出る。こうして見ると、品質・耐久性がしっかりしている太陽光パネルを、適切に保守・運用して、長期間、稼働し続けられれば、電力会社の電力料金(20円/kWh)より安い「グリッドパリティ」をすでに達成している。

――太陽光パネルを構成するセル(発電素子)自体そのものの寿命は、40年以上あるということなのか。

セルの半導体は、半永久的に劣化しない

 太陽電池のセルは、光を受けると電力を発生するP-N接合の半導体だが、結晶シリコン系の場合、このP-N接合自体には、太陽光発電程度のストレスでは大きな劣化要因とはならない。それなのに太陽光パネルに出力低下や出力異常が起きるのは、接合部以外の構造に問題が出てくること多いからだ。結晶シリコン系の太陽光パネル(太陽電池モジュール)の構造は、セルを直列に接続し、透明な封止材で挟んで表面をガラス、裏面をバックシートで被い、アルミのフレームを付けるという構成になっている。これらの構造体のなかで、不具合が生じる原因には、大きく三つある。

 第1は、セルとセルとの接続部、具体的には、ハンダ付け部分に長年の間に不具合が出てきて、断線不良になるケース。第2は、セルに割れが生じて電流経路が部分的に断たれるケース。第3が、封止材やバックシート、フレームなど材料の劣化に起因する不具合だ。

――出力異常が見つかるような耐久性に問題のあるパネルには、これらの不具合のうち、何らかの傾向が見られるのか。

 大量の使用済みパネルを検査してきてわかったことは、特定の異常症状が、同じメーカーの同じ型式、もっと言えば、型式の中でも一つの工場で同時期に作られたロットに集中する傾向があるということ。これは、製造工程に何らかの問題があるのではないかと推察される。たとえば、ハンダ付けの工程管理などである。