PCSメーカーが設計変更に応じる

 昼過ぎにあまりに頻繁に出力抑制するので、PCSメーカーに問い合わせたところ、昼過ぎはオフィスが昼休みで電力需要が減るため、需給バランスが崩れて電圧が上がりやすくなるので、PCSがそれを検知しているのでしょう、との回答だった。そこで、出力抑制が起きている時に、連系している電力系統の電圧を測ったところ、電圧値は平常だった。PCSメーカーの技術者をサイトに呼び、問題を直接確認してもらった。

 結局、そのPCSは、系統電力の電圧を検出する方法に不適切な部分があることが分かり、メーカーは設計変更して対応してくれた。実は、PCSは、電力系統の状態を検出しながら、出力を抑制するなど、かなり複雑な制御をしている。こうしたシステムに異常があっても、なかなか気が付かないのが実態だ。PCSをモニタリングしていても、PCS自体はそれを正常だと認識しているので、アラームが鳴ることはない。もちろんパネルをストリング監視していても、異常な出力抑制には気が付かない。気象センサーによる推定発電量と実績との乖離という情報は、施工業者などに調査を依頼する際の大きな武器になる。

――気象センサーによる発電量の推定は、どの程度の精度なのか?

 気象センサーは、日射と気温、風速などを測定している。発電量を最も左右するのはやはり日射量で、日射センサーを太陽光パネルと同じ角度で設置しておくと発電量との相関はかなり強くなる。ただ、実際の発電量は、温度もかかわってくる。夏と冬ではパネルの温度が変わるので、高温時に発電ロスが増える結晶シリコン型太陽電池の場合、同じ日射量でも温度の低い冬の方が発電量は多くなる。

日射センサーの値から推定される期待発電量の太い緑線に比べ、黄色の発電量の計測値が欠けたような時間帯がある。赤線はストリング電圧値。系統電圧上昇による出力抑制の例で、日射センサーがあることで明白にわかる
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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 風速や風向きもパネルの温度に影響する。気象センサーで得られる気温や風速データを加味して発電量を予測する方法もあるが、予測手法が複雑になり、実際にはそれほど高い精度で予測できないので、当社では、ほぼ日射量を元に予測し、予測値と実績値との乖離の変化を見ている。

日射センサー設置例。太陽光パネルと平行に設置する
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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