太陽光パネルをどのように池に浮かべたのか

 約4500枚の太陽光パネルを、どのように池に浮かべたのだろうか。貯水池には、地上設置型で使う金属製などの架台の代わりに、いかだのようなプラスチック製の部材に、太陽光パネルを取り付けて浮かべている(図3)。水に浮かべつつも、水面の流れに影響されて、太陽光パネルの位置が大きく動いたり、池の水位が変わって太陽光パネルが傾いたりすることを防がねばならない。

図3●いかだのようなフロートを連結して太陽光パネルを浮かべる
(撮影:日経BP)
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 建設の流れは、いかだのようなプラスチック製の部材をつなげ、所定の位置まで船で運び、太陽光パネルを20枚ずつ取り付ける。この作業を繰り返して太陽光パネルを固定する(図4)。そして、全体が風や水流に流されないよう、四隅から池の底に錨をおろして固定した。風が強い日など、池の水面では波が発生するが、部材の接続部の工夫によって、波による揺れを吸収できるという。

図4●接続箱も水上に
(出所:日経BP)
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 同社によると、今回の貯水池の断面は、底面はほぼ水平で、岸に近づくと斜めにせり上がる、いわば洗面器のような形になっている。ここで問題になるのは、水位の上昇ではなく、下降なのだという。岸の近くまで太陽光パネルを浮かべてしまうと、水位が下がった時に、岸に近い太陽光パネルが、底につくことでせり上がってしまい、発電に支障をきたす可能性がある。そこで、9mの水位差に対応できるような位置まで、岸から離して浮かべる設計とした。9mの水位差を前提にしたのは、池の底に湧水があるために、一定以上は水位が下がりにくいという点を考慮した結果という(図5)。

図5●水位が低い日には、このように池の中の構造まで浮き上がる
(出所:日経BP)
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 太陽光パネルを取り付けるいかだのような部材は、中が空洞となっており、「フロート」と呼ばれる。この部材は、フランスCiel et Terre International社製である。欧米などでは、池などに浮かべる太陽光発電所が先行している。こうした実績の豊富さを重視して採用したという。とはいえ、「桶川のようなメガクラスの規模での採用は珍しい」(ウエストホールディングスの永島歳久専務)ことから、ウエストホールディングスグループと共同開発した部材を導入した。

 太陽光パネルは、フロートに最適な製品として、Ciel et Terre社が推奨する中国のJAソーラー製を採用した。太陽光パネルの設置角度は、15度にした。風圧による影響を小さくし、かつ、発電量を確保することのバランスから決まった。池の上は、ほこりなどが少ないために、地上設置型に比べて、低い角度で設置しても、汚れによる発電量が低下する影響は小さいとみている。

 このほか、水上に太陽光パネルを浮かべて発電するためには、太陽光パネルの背面や側面に入り込む水分を遮断する技術、電気的な接点に水分が浸透することによる短絡を防止する技術、多湿な環境での絶縁抵抗の低下による漏電を防止する技術などがポイントになるという。