全国有数の積雪地帯である秋田市。冬はどんよりと曇りがちで日に恵まれない。日射量のランキングで全都道府県中、下から数えて数番目だ。太陽光パネルに雪が積もる恐れもある。秋田市が市内に建設したメガソーラー(大規模太陽光発電所)は、こうした不利な気象条件に加え、廃棄物の最終処分場跡地のため、造成工事に制限があった。少ない日射、積雪、最終処分場跡地という“3重苦”を克服して事業性を確保するため、さまざまな工夫をしている。

図●上空から見た秋田市メガソーラー
廃棄物の最終処分場跡地に建設した秋田市のメガソーラー(出所:秋田市)

太陽光に向かない地域にあえて建設

 秋田市総合環境センターは、秋田市内の家庭から出る一般廃棄物を受け入れる施設だ。最大で1日460tのゴミを焼却・溶融してスラグなどに再利用する。10年ほど前にガス化溶融炉を導入するまで、同センターでは燃えるゴミを焼却炉で燃やし、その焼却灰と燃えないゴミを隣接する処分場に埋め立ててきた。最終処分場は一杯になると土を被せて放置する。覆土した土地は用途が限られるため、雑草の生い茂った野原になっていた。

 そんな約4.6ヘクタールの未利用地に今年10月1日、1.5MWのメガソーラーが竣工し、発電を始めた。同センターの門を入ると正面にガス化溶融炉の巨大な四角い建屋が迫ってくる。その隣のリサイクル施設を左に見ながら建物の裏側に回ると、緩やかな斜面に整然と並べられた太陽光パネルが目に入る。縦1.6m、横1mの多結晶シリコン型太陽光パネルを9170枚、30度に傾けて設置した光景は、濃紺と白の縞模様でデザインした巨大プレートによる現代アートのオブジェのようだ。

 「秋田市は日射量が少なく、太陽光発電には向かない地域。加えて、廃棄物の最終処理場跡地には地盤の問題もある。それでも固定価格買取制度(FIT)が始まったのを機に、思い切ってメガソーラーに取り組むことにした」。秋田市環境部環境総務課・地球温暖化担当の那須正明参事はこう打ち明ける。

 「地域経済を活性化させるには、メガソーラーの建設や運営に地元企業を深く関与させたい。そのためには、単なる土地貸しでなく発電事業者となって影響力を高めたい。だが、秋田市がメガソーラーの初期投資にかかるコストを負担したり、調達したりするのは難しい」。こんな議論が市当局内で続く中、行き着いたのがリース方式だった。先例は、群馬県太田市にあった。太田市では、市が発電事業者となりつつ、太陽光発電システムの設備を東京センチュリーリースの所有にした。通常の設備リースと違うのは、リース料の中に設備の建設コストだけでなく、発電所の稼働に付随して発生する定期点検、保守・修理のコストに加え、火災などに備えた各種保険に加入する費用も含まれていることだ。東京センチュリーリースは、こうした方式の契約を「包括的施設リース契約」と呼んでいる。

図●地上から見たメガソーラー全景
平らに造成できないため、傾斜した土地に三脚型架台で設置した(出所:日経BP社)
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