KUMADAI耐熱マグネシウム合金の押し出し棒
KUMADAI耐熱マグネシウム合金の押し出し棒
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KUMADAI耐熱マグネシウム合金の鋳造工場
KUMADAI耐熱マグネシウム合金の鋳造工場
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溶解鋳造設備(写真:不二ライトメタル)
溶解鋳造設備(写真:不二ライトメタル)
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別棟にある加工設備
別棟にある加工設備
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KUMADAI耐熱マグネシウム合金と汎用マグネシウム合金をFSW(friction stir welding)で接合したもの。FSWの接合機も加工設備内に備える
KUMADAI耐熱マグネシウム合金と汎用マグネシウム合金をFSW(friction stir welding)で接合したもの。FSWの接合機も加工設備内に備える
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ピストンの試作例
ピストンの試作例
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ネジの試作例
ネジの試作例
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 「地方から始まる『技術立国ニッポン』の再生」企画 熊本編で今回取り上げる不二ライトメタル。前編は、同社がマグネシウム合金の事業に挑んだ狙いなどを紹介した。後編は、従来のマグネシウム合金よりも軽量かつ高強度、高耐熱を特徴とする「KUMADAI耐熱マグネシウム合金」に挑んだ経緯や、事業化に向けて設置した製造プラントについて同社に聞いた。

マグネ合金参入のキッカケ、実はKUMADAI耐熱マグネ

 KUMADAI耐熱マグネシウムの材質はMg97Zn1Y2あるいはMg96Zn2Y2と、汎用のマグネシウム合金と異なる。室温耐力が512MPaで250℃耐力が300MPaであり、既存のマグネシウム合金の室温耐力(180MPa)を大きく上回る。熊本大学 教授の河村能人氏が見いだした材料であり、不二ライトメタルは国や熊本県の援助を得ながら、2002年に熊本大学と共同研究を始めた。KUMADAI耐熱マグネシウム合金は圧延加工することで強度が出る。圧延加工の要素技術を持っていることから、不二ライトメタルに共同開発の声がかかった。

 2006年にはJSTによるプロジェクト「次世代耐熱マグネシウム合金の基盤技術開発」に採択され、2011年までの5年間、同プロジェクトに参加。熊本大学内で進めるプロジェクトに社員を派遣した。プロジェクトが終了した2011年11月以降は、不二ライトメタルにてKUMADAI耐熱マグネシウム合金の実証評価と試作一環ラインの構築に移った。熊本大学にあったKUMADAI耐熱マグネシウムの製造プラントよりも大きな施設を、約12億円掛けて不二ライトメタルの工場内に設けた(費用の2/3は補助金、残りは不二ライトメタルの拠出)。その際、同プロジェクトに携わった研究員をまるごと不二ライトメタルで採用し、KUMADAI耐熱マグネシウム合金の生産にかかわるノウハウやリソースを同社内に引き込み、同社を挙げて実用化に大きく踏み出した。

 前編で紹介したマグネシウム合金に取り組み始めたのが2002年、そしてKUMADAI耐熱マグネシウム合金の共同開発を始めたのも2002年。実は、KUMADAI耐熱マグネシウム合金の共同研究を始めたのをキッカケに、不二ライトメタルは通常のマグネシウム合金の開発にも着手したのであった。「せっかくマグネシウム合金に関わるのだから、KUMADAI耐熱マグネシウムだけでなく『汎用もやろう』ということになった」(同社)。

少量であれば量産は可能

 JSTによる開発プロジェクトでは、プロジェクトが始まった2006年12月~2009年4月をフェーズ1、そこからプロジェクト終了の2011年11月までをフェーズ2と位置付けていた。フェーズ1とフェーズ2では、安定したビレット製造技術の確立や安定した押し出し技術の確立、製造物の評価方法の習得を目標に研究開発を進めた。熊本大学内から不二ライトメタルに場所を移したこれからはフェーズ3と位置付け、いよいよ量産化を実証する段階である。

 KUMADAI耐熱マグネシウム合金の製造プラントは、2011年11月に工場建設を開始。2012年10月に先端技術・実証評価設備工場が完成し、2013年春先から加工を始めた。導入した設備は、鋳造工場、押し出し設備、加工設備、表面処理施設、そしてこれから導入する試験・分析設備。この中で心臓部といえるのが、KUMADAI耐熱マグネシウム合金を得る材料のレシピに関わる鋳造工場だ。試作ラインという位置付けだが、少量であればここで量産にも対応できるとする。

 フェーズ1とフェーズ2に関わった研究開発員は7名。不二ライトメタルの社員だけでなく、熊本県の研究員や学生などで構成していた。KUMADAI耐熱マグネシウム合金のことを知り尽くしたメンバーである。事業化を急ぐべく、こうした研究開発員を不二ライトメタルはごっそり採用した。