PCSが担う売電量の増加や電力系統側の負荷の軽減

 電気設備の面では、太陽光パネルの変換効率の向上による発電量の増加とともに、PCSの高機能化による売電量の増加や、変動する太陽光発電電力の増加に伴う電力系統側の負荷の軽減などに期待が集まっている。

 太陽光発電事業において売電量を増やしたり、電力系統への負荷を軽減したりする上で、カギを握るのがPCSである。「PCSは、太陽光パネルと電力系統のそれぞれにつながり、双方の電力の揺らぎを受け止めながら、最大の売電量を実現していく。技術やノウハウで差がつく部分が多いシステム」と、東芝三菱電機産業システム(TMEIC) パワーエレクトロニクスシステム事業部PV事業推進室 技術主査の伊丹卓夫氏は言う。

 PCSが担う、メガソーラーの大量導入時の電力系統の負荷を軽減する技術には、例えば、電力系統の電圧が瞬間的に低下した際に系統をサポートして大規模な停電を防ぐ技術、電力系統の配電網の電圧が過度に上昇するのを防ぐ技術などがある。また、メガソーラー事業の収益を向上させる技術として、曇天時など日射量が十分でない時にも、発電量を最大限に確保する技術などがある。

 メガソーラーが急増するなか、電力系統をサポートする技術として注目を集めているのが、FRT(fault ride through)機能である。落雷などによって電力系統の電圧が瞬間的に低下したり、周波数に異常が生じた際などに、太陽光発電システム側のPCSが異常を検知して一斉に自動停止する可能性がある。この現象が生じると、電力系統の需給バランスが崩れて、広い範囲で停電する可能性がある。FRT機能によって、PCSが系統連系の状況を判断し、電圧が低下する前の一定以上の出力を継続する制御をする。

 また、電力系統の配電網の電圧が過度に上昇するのを防ぐ技術は、太陽光パネルからの逆潮流が増え、電力系統側の電圧の上昇した場合に必要になる。

 逆潮流しようとする配電網の電圧が一定以上高くなると、PCSは自動的に出力し、発電可能な状況であっても売電収入を得られなくなってしまう。この対策として、PCSから、電力系統の要所の電圧を一定に保つ役割を担う「無効電力」(負荷と電源との間を往復するだけで消費されない電力)を投入して、電力系統の電圧を調整する。

 また、日照に優れない日が約6割を占めるといわれる日本において、メガソーラーの発電量を最大化する技術が提案されている。例えば、曇りの日に想定される低出力時に最大限に発電量を確保する技術や、雲によって部分的に発電量が落ちている太陽光パネルがある場合に、発電しているパネルの出力を最大限に生かして、発電所全体で定格出力を維持する制御技術などが提案されている。

メガソーラーを構成するシステムや部材(日経BPが作成、写真はいずれも日経BPが撮影)
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 次回は、メガソーラービジネスのリスクや、その回避ためのの手法を紹介する。