求められる積極的な参画

 部材メーカーと医療現場の密な連携が加速し始める中で、これから医療機器分野に初めて参入することになる部材メーカーも少なくないだろう。そうしたメーカーが懸念を抱くのが、医療機器ならではの法規制だ。ただし、その責任の範囲は、開発した要素技術を医療機器メーカーに供給するのか、自ら機器の開発まで手掛けるのかで大きく異なってくる(図6)。

図6 技術提供か機器開発か
要素技術を開発した部材メーカーにとっては、技術の供給をするのか、自ら機器を開発するのかによって、責任の範囲が異なってくる。
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 要素技術を医療機器メーカーに供給する場合は、製造物責任法(PL法)によって、何か起きた際に訴追されるという危惧を持つだろう。しかし、「これまで医療機器の部材供給メーカーが訴追された例は、日本では一例もない。医療機器メーカーときちんとした契約書を交わせば、漠然とした不安を抱く必要はない」(国立循環器病研究センターの妙中氏)。

 一方、自ら機器開発まで手掛ける場合には、薬事法における業許可や製品ごとの承認・認証の取得など、他の業界とは異なる作法が必要になる。ただし、「障壁が大きいということは、本腰を入れて取り組めば、それだけのうま味があるということを意味する」(三菱総合研究所人間・生活研究本部 医療・福祉経営グループ 主席研究員の山田栄子氏)という見方もできる。

 国内の部材メーカーが持つ優れた要素技術と、世界的に高い水準にある国内の医療技術。「両方を兼ね備えている国はなかなかない」(ロームの高須氏)。その絶好の環境を新産業創出につなげるためにも、部材メーカーの積極果敢な参画が求められている。