バブル崩壊から既に20年が過ぎた。2008年の「リーマン・ショック」や2011年の東日本大震災に見舞われるなど、日本にとって困難な時代が続く。2012年12月の安倍政権発足以来、いわゆる「アベノミクス効果」で一息ついた業界はある。だが、中国や韓国、台湾など東アジアの企業との厳しい競争を繰り広げる製造業には、まだ薄日が差したとは言えない。製造拠点の海外移転や、近隣諸国の技術力が日本にキャッチアップする状況の中、「技術立国ニッポン」を再生させるのは一筋縄ではいかないだろう。

 日本の製造業がかつての輝きを取り戻すには、どのような策があるのだろうか。その鍵の一つに、中小企業の活性化がある。日本にある企業のうち中小(従業員数300人以下)が占める比率は、製造業では99.3%に上る(中小企業庁の調べ)。日本の製造業の能力は、中小企業に支えられているといっても過言ではない。

 これまで中小企業は、日本の大企業からの発注を受けてきた。日本の大企業の競争力低下が指摘される中、力のある中小企業の能力を発揮できる場が少なくなっているのではないだろうか。これでは、日本の製造業の先行きが危うい。この状況を打破するには、自社の強みを生かして異分野に打って出たり、国内の新興企業や海外の企業などこれまで中小企業が関わりにくかった企業と結びついたりすることが必要になる。それにいち早く気付いた中小企業は、今までの枠組みにとどまらない形の構築に踏み出している。

 “新たな結び付き”を模索する力のある中小企業は、日本各地に存在する。中小企業を取り巻く状況は地域ごとに異なっており、今までの枠組みを飛び出す策にも違いがある。本企画では、立地する地域に焦点を当て、キラリと光る中小企業の実像に迫る。