作業者1人で1製品の組立作業を完結させる「1人完結セル生産」と、その作業をセンサやITの活用で支援することが、いかに生産現場の作業者のやる気(モチベーション)を高め、ひいては顧客に喜ばれる製品づくりにつながるかを解説します。
関ものづくり研究所 代表
作業者1人で1製品の組立作業を完結させる「1人完結セル生産」と、その作業をセンサやITの活用で支援することが、いかに生産現場の作業者のやる気(モチベーション)を高め、ひいては顧客に喜ばれる製品づくりにつながるかを解説します。
1人完結で幾多の「常識」を超える
早いもので、本連載も最終回である。今回は、「これからの日本のものづくり」と大上段に構えて、生産現場だけではなくものづくりのプロセス全体に視野を広げつつ、過去9回のコラムをまとめよう。
作業者の実力がフルに発揮される職場に
営業部門の信頼を勝ち取ることに大きく貢献したのが、先にも触れた新機種に対する生産の立ち上げの速さだ。図2のデジタルセル生産による生産台数のグラフに、ライン生産時代のそれを重ね合わせたのが図3である。ライン生産の初回の量産台数は20台で、これはいわゆる量産試作だ。当時は2次元CADで設計していたため、…
作業者の実力がフルに発揮される職場に
前回(第7回)までは、デジタルセル生産の仕組みを構築する際の技術的な面を述べてきた。今回は、筆者がデジタルセル生産を運用・改善してきた約8年の間にどんな変化が起きたのか、逆に普遍的で変わらなかったものは何かについて、エピソードを交えて紹介しよう。
人ではなく状況を管理する
デジタルセルから得られるデータを分析すると興味深いさまざまな真実が見えてくる。図3はある機種を担当するAさんとBさんの2人の作業者を対象に、1台ごとの組立総工数(分)をグラフ化したものだ。
人ではなく状況を管理する
本連載では、これまでデジタルセル生産の構築を生産技術面から述べてきた。今回はこれを生産管理面からみていこう。
見たい時に見たい内容を表示する
さて、前回の冒頭で紹介した「デジタルカメラを使わない」という条件は機構設計の部分では達成した。しかし電気回路基板や調整・検査工程ではデジタルカメラ画像を使わざるを得なかった。試作品を写真で撮影することを代替できるような3次元データが存在しなかったためで、取締役もそこは承知してくれた。
見たい時に見たい内容を表示する
「1人完結セル生産」を実現するためには、「記憶力」という人間の弱みを補うことが不可欠だ。そのカギとなる「デジタルマニュアル」(図1)について今回は話を進めよう。
人間の弱みと強みをデジタル技術で補う
今回は、「1人完結セル生産」の実現における第2のハードルである品質の確保を乗り越える方法について説明しよう。「ものづくりの95%は設計(製品設計および工程設計)で決まる」というのが、設計に対する筆者の基本的な考えだ。つまり、集中力や注意力の不完全さに対する品質管理の仕組みの構築というハードルを越え…
人間の弱みと強みをデジタル技術で補う
前回(第1回)の最後に記したセル生産、特に製品を組み立てる全ての作業を1人に任せる「1人完結セル生産」の3つの大きなハードルについておさらいしておこう。第1は、熟練工の養成。大規模アセンブリを1人で完遂できる作業者の養成である。第2は、品質の確保。品質管理の仕組みを構築する。第3は、設備のコスト。…
労力は付加価値の高い仕事に向ける
「明るく楽しい現場から、お客様に喜ばれる製品が生まれる」。この言葉は、筆者が最も大切にしているものづくりへの「思い」だ。自分自身の名刺にも記している。これまでの経験から、生産現場で働く人が明るく楽しいと感じていれば、必ず生産性が向上する。生産現場では働く作業者のやる気を高めることが一番である。