次に揺らぎを発生させた状態の音声品質測定結果を図11に示します。

図11●揺らぎ発生時の音声品質
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 揺らぎを発生させたことで音声品質が劣化したことが分かります。WiresharkのRTPストリーム解析を再度みると(図9参照)、Lost RTP Packet(ネットワーク伝送中に損失したRTPパケットの割合)は0.23%とほとんどないことが分かります。そのため劣化の原因は、ジッタバッファの許容量を超えたためだと考えられます。

 これまで、ネットワークの状態と音声品質の関係を見てきました。音声遅延時間が大きいと会話が間延びしてしまい「通話」品質は悪くなりますが、音声品質そのものにはほとんど影響を与えないとの結果になりました。また、ネットワーク上で発生するパケット損失や、揺らぎが大きくなることで発生するジッタバッファにおける音声データの廃棄により、音声品質が劣化することが分かりました。

 今回の測定では音声コーデックとしてG.711 μ-Lawを使いました。音声コーデックにはITU-T G.113のAppendixで損失耐性(Bpl)が定義されており、この値が大きいほどパケット損失に対する耐性(パケット損失が音声再生に与える影響度合い)があります。

 パケットの損失耐性が高いコーデックの採用やジッタバッファのチューニングにより、ネットワーク上の問題をある程度吸収することが可能ですが、音声データの伝送路の品質も重要な項目だと言えるでしょう。この特集も含めて音声通話サービスの評価結果が異なるのは、主観評価や客観評価といった測定方法の違い以上に、ネットワークの状態が大きく左右していると考えられます。

 また、実際の評価ではより多くのサンプルが必要になります。測定日時の選定方法やサンプル数の決定方法、無線系を使用する場合などの測定方法についての詳細は、品質測定のガイドラインであるテレコムサービス協会 VoIP推進協議会の「IP電話の通話品質測定ガイドライン 第3版」を参照して下さい。

 なお、今回の測定も各種サービスを導入する際の評価方法の一助となることを目的としたものです。測定端末の種類や通信回線種別、アプリケーションのバージョン、通信回線の状態などによって測定結果は変化することをご了承下さい。