駅舎や付帯設備も省エネ化

 鉄道車両の分野では省エネ対策が進んでいるものの、現在大きな課題として浮上しているのが、駅舎などの付帯設備の電力消費量である。

 先述したように鉄道事業者は少子高齢化による減収への対応策として、運輸事業だけでなく、非運輸事業を拡大させつつある。そのため、駅内店舗の増設や商業施設の運営、デジタル・サイネージの拡大、高速通信網の整備などを進めている。これらの電力消費量が、大きな割合を占め始めているのだ(図5)。「もはや“付帯”とは言えないほどの電力消費量である」(ある鉄道関係者)。

図5 運輸事業だけではない鉄道事業者
JR東日本の非運輸事業の売上高は全体の3割を超えている(a)。エネルギー消費においても3割弱が駅舎や付帯設備によるものになっている(b)。(図:JR東日本の資料を基に日経エレクトロニクスが作成)
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 例えば、JR東日本の2010年度における全売上高に占める非運輸業の割合は3割を超えている。これに呼応するかのように同社の鉄道運行以外のエネルギー消費量は全体の約3割を占めるまでに膨らんでいる。

 2011年春以降、全国的な電力不足を受け、これら付帯設備の省エネ対策は避けて通れない状況だ。

 そのため、駅舎に省エネ効果が大きいLED照明を採用して調光制御したり、駅舎の屋根などを活用して太陽光発電を導入するなどの「創エネ」に取り組む鉄道事業者も登場している。「再生可能エネルギーやLED照明の電力などの“見える化”に対する乗客の反応は非常に大きい。この分野にもっと注力するつもりだ」(JR東日本)。