ユーザー参加型のものづくり「UGD(user generated device)」時代に向けて,機器の製造体制はこれまでの大量生産一辺倒から一品一様への対応という大変革を求められる。

 エレクトロニクス・メーカーでは,EMSへの生産委託が一般的になっている。現状では大量生産が前提で,EMSに委託する際には,一般的に1万台程度が最低の数量になる。これより少ない場合は筐体を製造するための金型の作製費を負担する必要があり,やはり数千台の規模を製造しなければ,とても償却できない価格になる。これではUGDの実現は難しい。

 しかし,製品の試作サービスに目を向けると,将来的に大量生産とは全く逆の一品一様の体制の実現は,決して絵空事でもないように思える。

 メーカーでは,製品を企画・開発する際には試作が必須であり,少数の試作品を頻繁に作っている。こうした筐体やプリント基板などを試作するサービスが,簡単かつ安価に発注できるようになってきた(図1)。具体的には,筐体は金型を用いた試作なら10万円程度, 3DプリンターやNC工作機械を使うと1万円を切る価格の試作サービスなどが登場している。

図1 試作サービスからUGD支援サービスに
現在でも筐体やプリント基板の試作サービスを使って,わずか数日で試作品を作ることが可能だ。将来的にはさまざまな部品をインターネットを介して簡単に購入できるようになるだろう。
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 一方,プリント基板ではインフローが運営する「P板.com」のような試作サービスが登場した。最低3万円弱でプリント基板を試作できる。これまでプリント基板では, 10万円以上の費用が必要だった。

 いずれのサービスでも,図面や3次元データなどがあれば,発注から数日のうちに試作品が納品される。UGD製造の初期段階では,こうした低価格の試作サービスを利用するのが一般的になるだろう。将来的にUGDの開発が活発化すれば,筐体やプリント基板だけでなく,実装やさまざまな部品モジュールを提供してくれるサービスがどんどん登場するだろう。

 そして,究極の姿は筐体を“その場”で作ること。小型の3DプリンターやNC工作機械といった製造装置を一家に1台設置する姿だ。自分の要求仕様に合ったプリント基板やその他の部品モジュールを購入し,筐体は自らが製造して完成品にする。

 こんな世界は,意外と早く訪れるかもしれない。これらの卓上型製造装置の価格が,一般ユーザーでも手の届くところにまで下がりつつあるからだ。例えば,3Dプリンターの低価格品は現在100万円程度。「10年前に比べて1/10に下がった」(ツクルス 代表取締役の相馬達也氏)という。一方,卓上型NC工作機械では30万円を切る低価格品が登場し,ネット販売で購入することも可能だ。