ユーザー参加型のものづくり「UGD(user generated device)」で開発するには,さまざまな分野の専門知識を容易に活用できるオープンな環境が必要である。自分が詳しい知識を持たない専門分野でも,集合知をはじめ,企業や大学などから協力を得ることができれば,開発を進めることができるからだ。
だが,これまでの開発体制といえば,メーカー内の研究所や事業部の開発部署などが中心となって進めていたのが実状である。他の企業や大学などと共同開発することもあるが,協力関係は特定の企業や大学に限られた場合がほとんどだった(図1)。
この閉ざされた開発体制が,今,変わりつつある。ネット社会の拡大により集合知の活用が活発化し,メーカーでも研究開発体制をオープンにする動きがある。代表例が,洗剤や化粧品など一般消費財を手掛ける米Procter & Gamble Co.(P&G社)である。
同社は2000年ごろから,外部のリソースを積極的に活用する体制「コネクト・アンド・デベロップ(C+D)」を打ち出し,従来の研究開発体制を大きく切り替えた。同社は約9000人の研究者を擁するが,こうした人たちと同等の能力を備える研究者が外部には150万人いるとして,そのリソースを活用することを目指した。
具体的には,「テクノロジー・アントレプレナー」と呼ぶ社員が中心となって,他の企業や大学などをはじめ,展示会や販売店などを歩き回って技術的な情報を幅広く収集している。このほか,技術者の仲介や技術移転を手掛けるWebサイトを積極的に活用している(図2)。
例えば,幅広い分野の技術者が登録している「NineSigma」や,製薬や化学分野などの研究開発に特化した「InnoCentive」,大手企業を引退した優秀な技術者の派遣を仲介する「yourencore」,知的財産などを含めた技術移転を手掛ける「Yet2.com」などのWebサイトである注2)。
注2) ナインシグマ・ジャパンによると,アルプス電気やオリンパス,昭和電工,デンソー,東芝,NECなど30社以上に上る日本メーカーがNineSigmaを利用しているという。