オープンな開発体制

 開発の段階で重要なことは,さまざまな分野の専門知識を容易に活用できる,オープンな環境を構築することである。幸いなことに情報インフラは拡充し続け,専門家の協力を得たり,他者が持つ知的所有権を活用できたりするWebサイトが次々に登場している。自社の開発体制を強化するために,これらのWebサイトを活用する企業も数多く出てきた。

 中には,これまで閉ざされていた研究開発体制をオープン化し,社外に対して必要とする技術の募集内容を公開する企業も登場している。この状況が発展すれば,個人でもこうしたWebサイトを活用したり,技術を公募したりすることで,UGDを開発できる体制が整うはずだ。

試作は1個単位で

 製造の段階では,これまでの「大量生産」一辺倒だった体制から「一品一様」体制への移行を求められる。筐体や部品の調達から組み立て,ソフトウエアの実装まで,より簡単にかつ安価で実現しなければならない。さらに,仕上がった製品の品質をどのように担保するのかも大きな課題になる。

 その体制への移行の片鱗を見せているのが,試作分野である。既に筐体の試作では従来より安価で,短納期かつ一品一様な製造が可能な体制を実現している。

 プリント基板でも安価で短納期の試作サービスが登場し,図面さえあれば,数日のうちに試作品を受け取れる。将来はUGDに向けて,1個単位で,しかも安く製造する体制が整うだろう。

 出来上がった製品の品質保証については,製造をEMSに委託する企業などでは,仕様のすべてを,部品やソフトウエアを供給する企業に対してオープンにすることで,品質を担保してもらう仕組みが確立している。。

 このように,企画,開発,製造の各過程でUGDを実現可能にするための取り組みがどんどん広がっている。こうして登場したUGDをますます発展させていくには,同じ趣味を持つユーザー同士が情報を共有したり,自分の“作品”を自慢できたりするコミュニティーの活性化が重要なテーマとなるだろう。

 既に料理の世界などでは,その仕様をレシピや設計図という形で公開するWebサイトの人気が高まっている。ユーザーが実際に作った仕様をWebサイトで公開し,それを異なるユーザーが実際に採用して評価する。こうした仕組みが,ユーザーの次の作品に取り組むモチベーションを高めることで,コミュニティーの活性化につながっていく。