昆虫の形状を真似たロボット。takramが由紀精密工業と開発した
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 米IBM Corp.が,新たな長期戦略「Smarter Planet」を事業展開している。多様な環境からデジタル・データをコンピュータに取り込み,「環境負荷が小さく安全な社会の実現を目指すもの」(日本アイ・ビー・エム グリーン・イノベーション事業推進部長の岡村久和氏)である。ここで同社が対象とするのは,エネルギー,交通,食物,水,社会インフラ,医療,鉄道,建物など。これまでコンピュータが強くかかわってこなかった分野を含む。同社は,地球上のあらゆる存在をデジタル化しネットワークに接続して,コンピュータが関与する領域を拡大していく狙いである。

 これからのコンピュータは,地球規模の膨大な情報から,人類や地球にとっての最適解を求めることになりそうだ。そして,自然界に直接働きかける。例えば,大雨が発生することが分かったとき,河川の最適な流路を求め,そうなるように流路を人工的に変えて,洪水を防ぐ。

 IBMと同様の戦略は,米Hewlett-Packard Co.などのコンピュータ・メーカー,米Accenture社のようなコンサルティング企業も手掛けている。しかも民間企業のみならず,世界中の政府が取り組んでいる。米国政府が推し進める「グリーン・ニューディール政策」に端を発する,地球レベルでの環境政策を後押しするためだ。グリーン・ニューディールの実現に向けては,コンピュータがエネルギー資源の最適配分の解を求め,CO2を劇的に削減する。スマート・グリッドは,その一例である。