HTML5へのシフト、NTTドコモによる9975円(キャンペーン価格)のタブレット端末「dtab」発売、米Facebook社によるAndroid向けホーム・アプリ「Facebook Home」の提供─。全く違うように見えるこれらの現象の根っこにあるものは共通だ。

 Google社やFacebook社、米Amazon.com社などに代表されるサービス企業は、ハードウエアを均質化し、同じサービスをすべてのハードウエアで利用可能にすることを目指す。その上、サービス企業には広告やコンテンツ販売といった別の収益源がある。安価にハードウエアを提供し、後から費用を回収するといった事業モデルも採用できる。

 こうした状況は、部品メーカーにとっては望ましいことだ。もちろん競争は厳しいが、標準的なハードウエアに不可欠な部品として認められれば、その部品メーカーは強固な立場を手に入れられる。

残るか、次を探すか

 戦略の見直しを求められるのは、製品の機能や性能での差異化を図ってきた端末メーカーだ(図8)。HTML5への移行が示すように、端末に求められるのは標準的なハードウエアとしての機能を備えることだ。端末メーカーは今後、(1)標準的なハードウエアに付加した独自のハードウエアやアプリで差異化を図り続ける、(2)標準的なハードウエアを安価に提供できる体制を整える、(3)スマートフォンやタブレット端末などのように均質化を求められる端末の事業から離れる、のいずれかを選ぶことになるだろう。これは、Samsung社やApple社も例外ではない。

図8 競争相手が変わるハードウエア・メーカー
HTML5への移行は、機器の差異化がさらに困難になることを意味する。その上、アプリ単体よりもアプリとサービスの連動で付加価値を生み出すことになる。ハードウエア・メーカーは、小売りや広告といった収益源を持つサービス企業と競争せざるを得なくなる。
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 独自ハードやアプリで勝負し続ける(1)を選んだ場合は、仲間作りが難しいことを覚悟しなければならない。そのハードを載せることでどれだけの差異化ができるのか、そのハードを使いこなすアプリやサービスを自分たちだけで提供できるのか。こうしたことを考えながら、標準ハードウエアに載せたアプリを上回る付加価値をもたらす必要がある。

 (2)では、中国や台湾、そしてこれから成長する新興国の企業との激しいコスト競争を繰り広げることになる。グローバルで均質化した端末を大量に安く製造できる体制を整えることが前提だ。その上で有効な方法の一つが、小型化や軽量化などのパッケージングで勝負すること。国内市場で国内メーカーがある程度のシェアを維持したノート・パソコンのような状態を目指す。

 もう一つの方向性は、国や地域、サービス事業者ごとに異なる要求に合わせるカスタマイズを早く安くできる体制を作ることだ。各国の携帯電話事業者やWebサービス企業と強固な関係を構築し、世界中の製造事業者をうまく活用する必要がある。

 最後の(3)で考えられるのは、スマートフォンの開発で業界が生み出した成果を、他の機器に活用するという方法だ。その機器固有のハードウエアに対応させたり、機器としての信頼性を向上させたりして、機器メーカーとしての付加価値を提供していくことになる。