超小型人工衛星

 ロケット打ち上げ能力の余剰リソースを利用して小型衛星を搭載する試みは、宇宙開発の比較的初期から行われてきた。世界初のアマチュア無線衛星であるOSCAR-1はスプートニク1号からわずか4年後の1961年に打ち上げられた。アマチュア無線というオープンなコミュニティと大学における超小型衛星開発は相性が良く、1980年代から90年代にかけて英国サレー大学(UoSatシリーズ)や米国スタンフォード大学(OPAL)などでアマチュア無線を用いた技術実証衛星が開発されるようになった。

 1990年代にはNASAが“Faster, Better, Cheaper”のスローガンのもと、コスト・開発期間を短縮してより多くの成果を出すために、満塁ホームランを狙う(多様なミッションを詰め込んだ大型プロジェクト)からコツコツとヒットを積み重ねる(ミッションの粒度を下げて小規模プロジェクトを多数実施)方向へと転換していった。このような流れの中でニューミレニアム計画のDeep Space-1やEarth Observation-1などが成果を上げ、NASAのプロジェクトにおいても従来よりも小型の衛星に注目が集まることになった。

 1999年、日米の超小型衛星関連の大学が集まるUSSS(University Space Systems Symposium)会議が開催され、CubeSat(キューブサット)規格が提唱された。衛星の大きさを一辺10cmのサイコロ型、重量を1kg以下と規定することで、ロケットに搭載して軌道投入するための分離機構を標準化した。また、設計の自由度をある程度制約することで、限られた予算と時間の中で設計しやすくする、という意図もあった。2003年には、東京大学XI-IV(サイ・フォー)と東京工業大学CUTE-1が世界初のCubeSatとして打ち上げられ、運用に成功した。

 CubeSatは従来の宇宙先進国だけでなく、世界各地の大学・宇宙機関などで広く開発されるようになり、コロンビアやルーマニア、ハンガリー、ポーランドなどはCubeSatの打ち上げで衛星保有国の仲間入りをし、宇宙開発の裾野拡大にも大きく貢献している。日本においては、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)というコミュニティが組織され、多くの大学でCubeSatの枠組みを超えて多くの超小型衛星を開発している。超小型衛星の研究開発が最も活発な国の一つと言えるだろう。

 このように超小型衛星が発展していく中で、大学発のベンチャー企業が世界的に生まれてきており、教育や研究開発から実用ビジネスに活用しようという動きが活発化している。

 また、CubeSat開発の普及とともに、教育用キットやカメラ、通信機器、電源ユニットなどのコンポーネントの販売、ロケット搭載のアレンジを行う企業が多数生まれ、水平分業化が進んで独自のエコシステムを形成している。

キューブサット関連のサービスや機器を販売するWebサイト「CubeSatShop\.com」
キューブサット関連のサービスや機器を販売するWebサイト「CubeSatShop.com」
http://www.cubesatshop.com/
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