MEMSと封止技術がカギ

 こうしたデバイスの“大競争時代”の勝者の条件として,(a)顧客と密着した開発を継続できることが欠かせない。技術的には(b)多機能のデバイスを統合する“デバイス統合力”のあることが重要との指摘が多い。

 (a)顧客密着という面では,対象市場において高いシェアを維持していることが求められる。電子部品メーカーや一部の大手半導体メーカーには,携帯電話機やゲーム機,自動車などのデバイス市場で高いシェアを誇っている企業があり,こうした企業はその条件を満たす。また開発を継続する上では,資金や人材のリソースを割ける大手であることも必要といえる。

 (b)デバイス統合力でカギを握るのがMEMS技術である。統合化デバイスは,Siデバイスの中で機能回路を集積するSoCとは異なり,センサーやバイオ・チップなどの多様な機能も取り込む。こうした多様な機能は,今後幅広い用途で必要になる可能性が高く,多くはMEMSで実現する(図3)。例えば,自立・分散型のネットワーク・デバイスやユーザーに優しいインタフェースを備えたデバイスなどである。半導体による信号処理部分だけではなく,RF回路,センサー,アクチュエータ,電源など,半導体以外で実現するデバイスが必要である注3)

注3)多機能の要素技術を統合化していこうとする動きは研究レベルでも進んでいる。日本では,例えば経済産業省主導の国家プロジェクト「Bio Electro-mechanical Autonomous Nano Systems」が,多機能統合化デバイスの研究を推進中である。

図3●ネットワーク,インタフェース,自立・分散へ
次世代デバイスの要素技術とそこで付加価値を決める技術を示した。微細化よらず進化させる「More than Moore」の技術ではMEMSが欠かせない。日経マイクロデバイスが作成。
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 さらに,加速度センサーなどのMEMSセンサーや可変容量素子などのMEMSアクチュエータまで統合化していくには,既存の電子部品や半導体にはなかった技術が必要になる。密閉技術である。MEMSによるセンサーやアクチュエータには基本的に可動部があるため,空洞ができるように密閉した後で樹脂封止するといったプロセスが必要となるためである。このプロセスの量産化で先行しているのは,特に民生機器向けに加速度センサーなどのMEMSデバイスを大量生産しているメーカーである。例えば任天堂のゲーム機「Wii」のコントローラ向けに加速度センサーを提供している米Analog Devices, Inc.(ADI)や伊仏STMicroelectronics社は,こうした密閉技術でノウハウを持つ。