「2次元CADで設計していたころよりも、設計時間が延びてしまった」。設計を効率化するために導入したはずの3次元CAD。だが、その使い方を誤ると、こうした落とし穴にはまってしまう。

 実際、金型メーカーのモルテック(本社川崎市)では、3次元CADによる金型のモールドベースの設計を開始した当初、「2次元CADで設計していたころの2倍近い時間がかかった」(同社代表取締役の松井宏一氏)と明かす。誤解がないように付け加えておくと、3次元CADの操作の習熟度の問題ではない。

 3次元化で設計時間が延びる最大の要因は、幾何学的に矛盾のない立体形状を作成しなければならない点にある。2次元図面では省略したりあいまいなまま進めたりしていた部分を、しっかりと形状定義しなければならないからだ。加えて、①押し出したり回転させたりと、平面的な図形(スケッチ)を立体化する必要がある、②単なる作図のツールだった2次元CADと違って、3次元CADは機能が豊富で必要な機能を選択するまでの操作回数が多い。これらの点も、設計時間を延ばす方向に作用している。

 従って、すべての3次元データをゼロから新規に作っていては、設計現場の負荷は多大なものになる。設計上の狙いからガラッと違う新たな構造を採用した部位を除けば、できるだけ既存の3次元データを流用して新規に作成しなければならない部分を減らしたり、モデリングの自動化を図ったりしていく取り組みが重要といえる。