設計を3次元化したら2次元図面はなくなるはずだったのに、現実は違った。3次元データは、「情報量が多すぎるため、2次元図面と比べて、必要な情報をより分けるのが大変」「CADやビューワを起動して画面に表示させなければ、情報にアクセスできない」「形状に対していちいち寸法を付けないので、寸法を知りたい場合は計測の操作が必要になる」といった理由があるためだ。

 だが、3次元データに加えて2次元図面を作り続けていたら、設計現場は疲弊してしまう。そこで求められているのが、設計を3次元化したのであれば、設計情報の伝達方法もそれに合わせて見直すこと。そうした取り組みを進めている代表格が山形カシオだ。前回は同社が、最後まで2次元図面、あるいは簡略図面が残るだろうと推測された検査工程で自動化を推進し、“2次元図面レス”を達成しつつあることを紹介した。そして、その具体例の1つとして、成形品の変形具合の検査の自動化に向けての取り組みについて触れた。

加工前に測定用NCデータを作成

 山形カシオにおける検査の自動化の取り組みでもう1つ興味深いのが、金型部品の寸法検査に関するものだ。

 のように、工作機械の工具を寸法測定用のプローブに自動で交換する仕組みを導入し、そのプローブの動きを3次元CAM上で定義して測定用のNCデータを作成するためのカスタマイズ・プログラムを独自に開発した。それを、同社が使用するCAD統合型のCAM「NX」(米Siemens PLM Software社)に組み込み、加工前に加工用だけではなく測定用のNCデータも作成するようにプロセスを変更。加工直後にワークを工作機械から外すことなく寸法を自動で測定できるようにしたのである。測定結果は、金型の設計データと自動で照合され、自動で合否が判定される。さらに、自動で同社独自の“3次元図面”の中の表に入力される。

図●金型部品の寸法検査の自動化
山形カシオでは、工作機械の工具を測定用プローブに自動交換し、その動作プログラム(測定用NCプログラム)を金型部品の加工前にCAM上で作成することで、同部品の寸法検査を自動化している。測定用NCプログラムを作成するCAMのカスタマイズ・プログラムは独自に開発した。
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