それでは,HVT方式ではどうなるのか。HVT方式では,振動板を2枚背中合わせに配置する両面駆動タイプになることで,無指向性を得られる。この場 合,HVT方式はその薄さが幸いし,前面/背面の振動板距離を非常に小さくできる。つまり,横方向に伝わる音は,ほぼ同位相で振幅する(図2)。このた め,前面や背面から出た音が耳に達するタイミングにズレはほとんど生じない。今までは実現が困難であった理想的な無指向性放射パターンを持つスピーカーの 設計が容易になるのだ。これはHVT方式による薄型化がもたらした大きなメリットでもある。

図9 HVT方式のコンセプト・サンプル:無指向性を狙った試作<br>HVT方式で,ユニットの両面に振動板を配置した試作品の指向性パターン。指向性がほとんどないことが分かる。
図2 HVT方式のコンセプト・サンプル:無指向性を狙った試作
HVT方式で,ユニットの両面に振動板を配置した試作品の指向性パターン。指向性がほとんどないことが分かる。
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