海外工場でニーズが高いワケ

 この組立性設計が今、工場の海外展開が進む中で再び脚光を浴びている。熟練作業者でなくとも簡単に組み立てられることが、日本の工場以上に海外で求められているからだ(図2)。

図2●自動化で培った組立性設計のノウハウは海外工場でも使える
図2●自動化で培った組立性設計のノウハウは海外工場でも使える
単機能ロボットでも組み立てやすい設計なら、作業に慣れない人でも組み立てやすくなる可能性が高い。

 これは筆者の見解だが、日本人はものづくりに欠かせない幾つかの特性を持っているようだ。細かい作業をコツコツとやり続ける、どうしたらもっと作業しやすいかを工夫して改善する、作業者同士があうんの呼吸で連携する、といったことだ。もちろん、海外においても同じような特性を持った人材はいる。しかし、メーカーが言葉も文化も異なる国に進出し、一朝一夕に日本と全く同じ環境を手に入れることは難しい。

 日本とは異なる環境にある海外工場では、歴史的背景などもあって「改善=人員削減」という不安になりやすく、労働問題に発展するケースもある。しかも、離職率が高く、いつまでたっても熟練作業者を育てられないケースもある。作業が複雑であればあるほど、作業者の育成が難航する。安価な労働賃金だけを頼りに海外進出すると、こうした壁にぶつかることが大いに予想されるのだ。メーカーにとっても現地の作業者にとっても、不幸なことである。

 この状況を打開する手段として有効なのが、源流である製品設計の段階であらかじめ、熟練作業者でなくても組み立てられる設計をしておくこと。ここで組立性設計へのニーズが出てくるわけだ。工場を海外に展開してからフィードバックするのでは遅い。「フィードフォワード」しておくことが重要だ。このフィードフォワードは、その国の文化やものづくりの経験値を問わず、迅速に工場を立ち上げることにもつながる。