借方を見てできる限り現金化

 設備も、使われなければ投資が何の付加価値も生まずに寝ていることに過ぎない。そればかりか、工場内の動線の邪魔になったり、物流を遮断する原因になったりしているケースも多い。

 繰り返すが、借方の資産は、全てお金が資産に形を変えたもの。借方で寝ている資産を徹底的に減らして現金化することが、キャッシュ創出という点で極めて重要だ。

 お金を在庫にして長期間寝かせていれば、保管のための費用やハンドリングの工数が増え、ロスの原因になる。実際、在庫をきちんと管理できていない企業は意外に多い。長期滞留在庫を放置していたり、盗難が多いのにそれに気付かない状況にあったり、サプライヤーに無償支給している材料が無管理だったり。そうした会社では、帳簿と実際の不一致、すなわち在庫違算が起きている。

 多大な不良資産(長期滞留在庫など)の放置や在庫違算は、適切な決算処理がされていないことを意味する。財務諸表でいえば、資産や負債の状態を示すB/Sが不健全な状態だということ。つまり、健全な経営ができていないということに他ならない。そうした状態が長く続くと、経営破綻を招きかねない。

 経営の原点は、まず徹底してB/Sの借方をチェックし、資産を圧縮して現金化を図ることだ。それにより常に健全なB/S、すなわち健全な資産を保つことが重要である。

 経営の管理数値として、誰もが売上高利益率をチェックしているだろう。もちろんそれも重要だが、どれだけのお金を使って、どれだけの利益を上げられたかという視点から、総資本利益率(利益/総資本)を意識することも大切だ。総資本利益率は、売上高利益率(利益/売上高)×総資本回転率(売上高/総資本)で表される。従って、総資本を圧縮して回転率を上げるという取り組みが、キャッシュフロー経営を推進する上で欠かせないのである。