30年前の日本人の姿×インターネット

 ショッピング以外の行動(移動、食事、宿泊、観光、など)で得られた事実も含めて、調査結果をあえて一言でまとめるとすれば、中国人観光客は「30年前の日本人の姿×インターネット」だと解釈できる。

 現在の中国人観光客にとっての海外旅行は、30年前の日本人にとっての海外旅行と似た意味を持っている。例えばパリに旅行すると決まると、その人は親戚や知人などに「パリに行く」ことを伝え、「おみやげなにか欲しいものはない?」と聞く。そしてパリではショッピングと観光に精力的に動き、ありとあらゆる写真を撮る。帰国してから色んな人におみやげを渡す。そこには写真を見せるという意味もある。

 現在の日本人であれば、そういうことはほとんどないだろう。旅行に行く前に知人に触れて回ることもなければ、旅行に行っても体力の限り遊ぶよりも自分がリフレッシュされることを優先する場合が多い。一方、中国人観光客の日本旅行には、30年前の日本人がそうであったように、「自己アピール」の側面がある。

 そのため、日本に来る前に多くの人に「日本に行く」ということを伝えるし、日本に来たらおみやげなど精力的にショッピングを楽しむ。自分撮りのカメラが人気ということにも、日本語が表示されるデジカメを購入するということにも、自己アピールという面がある。

 ただ、30年前の日本と大きく異なるのは、インターネットがある、という点だ。インターネットのおかげで得られる情報が増え、それが旅行を良いものにしている面もあれば、買い物を煩雑にしているという面もある。さらに、撮った写真でアルバムを作らなくても、インターネットを使ってリアルタイムで友達に見せることができる。つまり、「自己アピール」をより簡易にできるようになったのである。