医療機器にも「おもてなし」、iPhone流の設計思想も
八山氏 医療イノベーション推進室には、ノーベル賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんが(室長代行として)参画されています。田中さんは、今後 の医療機器について「日本で開発するのであれば、日本の文化や日本人の精神をいかに付加していくかを考える必要があるだろう」と語っていました。
IT化やデジタル化というと、ややもすると機械的とか、気持ちがないとか思われがちです。先の田中さんの言葉を私なりに解釈すると、きめ細かなサービスとか、思いやりとか、今後の医療機器はそうした点にまで踏み込める可能性があると考えています。
中野氏 田中さんがそのように発言された時、私も同席していました。私のイメージでは、加賀屋(石川県にある旅館)がなぜ海外でも受けるのか、なぜ台湾に進出できたのかというように、おもてなしのサービスを医療機器にも付加できないかという話だったかと思います。
おもてなしとは何か、具体的には分かりませんが、例えば、ソフトウエア(技術)をもっと生かしていくことが大切だという方向かもしれません。実際、医療現場からは、単にハードウエアだけでなく、ソフトウエアに関するアプローチも欲しいという話を耳にします。
村垣氏 携帯電話機の分野でも、例えば「iPhone」はユーザー・インタフェースが非常にシンプルですよね。操作がすぐに分かります。それに対 して、日本の携帯電話機は複雑です。しかも、頻繁に使う機能は少ない。今後の医療機器においては、iPhoneと同じような考え方が必要になるでしょう。 表面上は機能をそぎ落として簡単なものにして、もっと機能を使いたい人はどんどん拡張していけるようにしなければなりません。
一方で、日本人には複雑さに耐えられる国民性があります。実際、きめ細かい治療での日本の実力は極めて高いですから。その点で、先ほど発言した診断と治療の一体化といった複合機器の分野では、日本は強みを発揮していけるでしょう。