ニーズとシーズを結び付ける

 前述の取り組みの中でも、特に中小企業による医療機器分野への参入促進は重要なテーマと言える。現状では、中小企業がこの分野に参入するのは簡単ではな い。もっと参入障壁を低くするような制度やインフラを作らなければならない。それにより、競争力の高い製品を作り、雇用も生み出し、地域の活性化を図って いく必要がある。

 その一つとして、我々が経済産業省と共同で展開しているのが、「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」である(図5)。 中小企業が保有しているさまざまなものづくり力を医療現場のニーズと結び付けることで、医療機器の実用化を促進していこうという事業である。

図5 中小企業による医療機器開発への支援
図5 中小企業による医療機器開発への支援
政府が実施している「課題解決型医療機器の開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」の概要を示した。(図:内閣官房の資料を基に本誌が作成)

 平成22年度の補正予算で30億円の事業として実施し、平成23年度は10億円の予算で実施する計画である。同年度の事業についてはこれから公募する。

 平成22年度については36件の事業を採択した。どのような採択案件があったのか、一例を紹介する。例えば、「高病原性インフルエンザの簡便で高感度な 早期診断のためのイムノクロマト方式体外診断システムの開発」がある。この中で、「早期診断」というのが医療現場のニーズであり、これに対して「簡便で高 感度」というのが、ものづくりに求められる部分になる。

 同様に、「精密切削・樹脂成型技術による、使いやすく人体を傷つけない新型咽頭鏡の開発」においては、「使いやすく人体を傷つけない」というのが医療現場のニーズであり、「精密切削・樹脂成型技術」がものづくりに求められる。

 これらの例で示したように、医療現場のニーズとものづくり力をいかに結び付けていくのかが重要になってくる。同事業などを通して、少しでも中小企業による医療機器分野への参入を促進していきたい。

本記事は、2011年5月26日と6月9日に本誌とデジタルヘルスOnlineが開催したセミナー「次世代医療機器サミット2011」において、八山氏が講演した内容を基に、加筆・編集したものである。