製品の電子化はますます進む

 これからの自動車は、以前に触れたセンサも含めて、インテリジェントキーやタイヤの空気圧チェックなど、無線を介してセンシングする部位(=アンテナ)が増えてくる。自動車の電子化は時代と技術の流れだが、その分、「搭載部品の電子化→ノイズ発生源の増大」「搭載電子部品の高速化→ノイズ強度の増大」という副作用への対処が不可欠になる。

 この2つのうち特に注意すべきなのは、搭載部品の電子化である。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)が普及している現状では、エンジンだけではなく車内搭載品のほとんどが電子化されていく。従って、ノイズが発生する部位と、ノイズを受信するアンテナと成り得る部位がそれだけ多く搭載されることになる。

 自動車に代表されるメカ系技術者には、センサなどのエレクトロニクス機器を多数搭載しても、最終的にはそれをもメカとして扱おうとするアクティブさがある。乗員の生命が懸かっているという安全性についての考え方は、ここでも適用される。しかし、センサというエレ系技術者のエッセンスを導入するということは、自動車の安全性・環境性に対してさらなるレベルアップを要求する形になっていることも忘れてはならない。

 このような製品面の変化と、製品ライフサイクルの短縮化が同時に進行することが、問題を複雑にしている。一般に商品が新しく市場に登場する場合、需要は時間の経過とともにS字のようになるといわれる(図1)。しかし、近年はこのS字カーブが、爆発的に売れるが廃れるのも速いパルス状になってきている。製品はベストセラーとして定着する(製品が商品に昇華する)間もなく、次々に類似製品が出現する。

図1●製品ライフサイクルの短期化
製品自体の複雑化およびモジュール化と相まって、メカ/エレ統合を難しくする要因になっている。

 製品のライフサイクルが短くなったことによって、ことにエレ系技術者は自身の設計思想を反映させる時間を持つことが許されなくなってきている。設計=CADへの落とし込み、という構図が構築されつつある現状では、「他と連携する」といっても「分からないことを聞くだけ」である。聞かれる側は、何ら辞書としての役割以上のものを持つことができない。