「ファブ・セントリック」を追求

 このような状況の中で,われわれは次の四つの取り組みを進めている。(a)高集積化,(b)複雑化への対応,(c)低消費電力化,(d)他社との協力関係の強化である。

 (a)高集積化によって製品力を高めた代表的な事例としては携帯電話機向けのMOS型イメージ・センサー(CMOSセンサー)がある(図2)。すでに0.18μmプロセスを使った130万画素,200万画素のMOS型センサーを出荷している。これを今後は500万画素,700万画素に高集積化していく。すでに2005年第3四半期には700万画素の試作に成功している。次世代の1000万画素に向けた画素ピッチ1.7μmの技術や,その先の1.4μmの技術も開発している。

図2 ●MOS 型イメージ・センサーの高集積化を加速
図2 ●MOS 型イメージ・センサーの高集積化を加速
すでに2005年第3四半期には700万画素のMOS型イメージ・センサーを試作している。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のデータ。
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 携帯電話機向けアプリケーション・プロセサなどを製造するロジックLSIプロセスに関しても微細化を積極的に進めていく。90nmノード(hp130)の量産化では競合他社に若干の遅れをとったが,65nmノード(hp90)ではほぼ追い付き,45nmノード(hp65)では追い抜けると考えている(図3)。

図3 ●「ファブ・セントリック」の事業モデルを目指す
図3 ●「ファブ・セントリック」の事業モデルを目指す
写真の工場は2005 年6 月に立ち上げた。CMOS イメージ・センサーや携帯電話機向けプロセサなどを製造する。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のデータ。
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 微細化によって,われわれが追求するのは「ファブ・セントリック」と呼ぶ事業モデルである。現在のLSI業界は,工場が中心のファブ・セントリック,工場を持たないファブレス,その中間のファブライトという三つの形態に分かれている。しかし,今後は一部の大手LSIメーカーが独占的に工場投資をするようになるため注2),ファブ・セントリック型の企業が業界の主導権を握るようになる。ファブ・セントリック型の企業は資金力だけではなく,効率の高い工場を作るための技術力や装置メーカーに対する影響力が求められる。われわれはすでに10以上の工場を保有しており,工場エンジニアの数でも優位な立場にあると考えている。

 高集積化を進めるためのパッケージング技術への取り組みも強化している(図4)。すでに1パッケージに10個のチップを積層したMCP(multi―chip package)を2005年に発表した。さらに携帯電話機向けのアプリケーション・プロセサとメモリーを積層したPoP(package on package)も提案している。ユーザーのシステムを高集積化できるだけではなく,消費電力の削減も可能になる。

図4 ●高集積のパッケージング技術への取り組みを強化
図4 ●高集積のパッケージング技術への取り組みを強化
携帯電話機向けのプロセサとメモリーを積層したPoP(package on package)を提案している。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のデータ。
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注2)一般に最先端の300mm工場を建設するためには30億~40億米ドルが必要となる。そのような巨額の投資が可能な企業は年間売り上げが70億米ドルを超える大手LSIメーカー7~8社に限られるという。