LSIの高集積化や複雑化が一気に加速

 携帯電話機向けLSI事業を進める上で特に注意しなくてはならない機器側の動向が四つある。(1)高機能化,(2)消費電力の内訳の変化,(3)薄型化,(4)大手携帯電話機メーカーによる寡占化である。

 (1)高機能化に関しては,例えば,400万~500万画素のデジタル・カメラ機能,音楽再生機能,モバイル放送の受信機能などが搭載されるようになる。さらに3次元グラフィックスを使ったゲーム機能も入ってくる。また,通信機能に関しても,さまざまな規格に同時に対応していくことになる。このため,携帯電話機向けLSIは高集積化や複雑化が一気に進む。

 (2)消費電力の内訳は,ビデオのストリーミング再生という用途が入ったことで変わってきた。これまでは液晶パネルの消費電力が大きな比率を占めていたが,ビデオ・ストリーミング中の消費電力の内訳はベースバンド・プロセサが21%,ボード上のバスが21%,アプリケーション・プロセサが23%,シンクロナスDRAMが20%と大半がLSIになっている。このため,LSIの低消費電力化が強く求められる。

 (3)薄型化というトレンドはここへ来て加速し始めた。面積は多少大きくても薄型の携帯電話機の人気が高まってきたためである。複数の携帯電話機メーカーが薄型化を進めた新製品を市場投入しようとしている。薄型の携帯電話機では部品の小型化が一層進むので,LSIの高集積化が求められることになる。

 (4)大手メーカーによる寡占化は,激しさを増している。2001年にはフィンランドNokia Corp.,米Motorola,Inc.,独Siemens AG,Samsung,スウェーデンEricsson社の上位5社で71%の市場シェアを獲得していた。これが2004年にはNokia,Motorola,Samsung,Siemens,韓国LG Electronics Inc.の上位5社で72.2%を占めるようになった。携帯電話機向けLSI事業で成功するためには,これら携帯電話機の大手5社との協力が欠かせない。