(写真:柳生貴也)

 売り上げの80%を占めるメモリー事業と,ここへ来て力を入れ始めたシステムLSI事業について,今後5~6年の見方を述べる注1)注2)

メモリー市場はまだ伸びる

 メモリー市場においては,この2年間,モバイル・デジタル家電,特に携帯電話機がけん引してきた。この傾向は今後も続くだろう。例えば第3世代携帯電話機の出荷が大幅に増えていく。第3世代機の比率は,日本では二ケタ%になっているが,世界市場ではまだ一ケタ%である。2008年には世界市場で30%に到達すると見ており,メモリーの消費量も急増する。これにネットワーク対応の家電が加わると,メモリー消費量はさらに増えていく。

 2004年における携帯電話機の出荷台数は約6億5000万台であり,1台当たり約40Mバイトを搭載している。2007年には200Mバイトを搭載することになると見ている。最近の携帯電話機は,多様な半導体を使うようになるが,われわれのそのほとんどを内製している。

 パソコン(PC)のメイン・メモリーも大きく変わってきた。DDR2/3といった高速版への移行が現在進んでいるが,さらにデュアル・コア・プロセサの採用で,高速インタフェース技術が必要になっている。次世代OS「Longhorn」が2006~2007年に発売されると,2008年のPCは2Gバイトが必要になる。今後2~3年でメモリーの消費量は大幅に増えていく。さらに新しい応用もメモリー需要を高める。例えば電源投入後に即座に起動するコンピュータが研究開発中であり,今後1年以内に大手コンピュータ・メーカーから発売される予定である。

注1)Kim氏は,Samsungの強さの別の背景が,同社の特殊な文化にあると言う。「私は1992年の入社以降,毎週60時間仕事をしている。毎朝5時に起床し,6時にオフィスに着くと,夜9時まで仕事をしている。なぜ,そのように仕事をするのかと言えば,それがSamsungの社風だからとしか言えない」(同氏)。

注2)Kim氏は,講演後の質疑応答の中で,日本の半導体メモリー・メーカーに対する見方を聞かれ,「答える立場にない」と断った上で一般論として次のような見解を示した。「半導体事業では,技術力向上と設備投資の両方を実践しなければならない。日本のメモリー業界は,技術力はあっても設備がないのではないか。もちろん,これらと利益を上げられるかどうかは別だが」(同氏)。