ソウル市には、「スマートラーニング研究学校」とは別に、韓国Samsung Electronics社がサポートする「スマートスクール」がある。名門私立、ケソン小学校がその一つである。

スマートスクールモデル校のケソン小学校。体育の授業で、円盤投げをしている生徒をタブレット端末が内蔵するカメラで撮影し、その動画をコマ送りしながら先生のフォームと各自のフォームを見比べている。
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 Samsung社はケソン小学校に65型の電子黒板、タブレット端末の「GalaxyTab 10.1」、さらにはスマート教育に必要なソリューションを提供している。電子黒板からタブレット端末を遠隔で制御したり、先生が作成した資料を生徒に送信したり、先生がクイズを出してその場で採点して正解率を表示したりできる。いわゆる、「Classroom Management」と「Mobile Learning Management System」である。スマートスクールを支援することで、Samsung社はタブレット端末が教育用途に向いているという宣伝効果と、学校のスマート化において必要なソリューションと端末の機能は何かを調査できる。

 筆者はケソン小学校では体育の授業を参観した。それは、タブレット端末を活用して円盤投げの正しい姿勢を覚えるという興味深い内容だった。

 運動場に出る前、先生は子供たちのタブレット端末に体育専門教師による正しい円盤投げフォームの動画を送信し、理論的なことを教える。次に運動場に出て、タブレット端末が内蔵するカメラを使って生徒たちが互いに投げる姿勢を動画撮影する。そして教室に戻り、撮影した動画をコマ送りしながら体育専門教師の姿勢と比較する。

  特に、ここからが面白かった。生徒たちは自分の姿勢と友達の姿勢についてタブレット端末にコメントを書き込む。その書き込みはリアルタイムで電子黒板に送信される。先生は子供たちが書いたコメントを電子黒板で見せながら、意見を出し合うように誘導していた。

 次に生徒たちは各自のコマ送り写真からお気に入りの1枚を選び、それを学校の教育用SNSに授業の感想とともに投稿する。これは「クラスティング」というクローズド式のSNSで、学校関係者、学生、保護者だけが利用できる。保護者のほとんどがスマートフォンを使っているので、生徒たちがどんな授業を受けたのか、リアルタイムで確認できるところが好評だという。

ツールの導入が目的に非ず

  ケソン小学校の教師が使っているデジタル教科書は、既存のデジタル教科書とは異なる。教師がPDF形式の教科書にデジタル教材を各自追加して、子供たちが理解しやすいよう工夫されているのだ。ケソン小学校のチョウ・キソン先生は、政府の教育科学部から委嘱された先導教師の一人として、教師にとって授業を行い易い新しいデジタル教科書の開発に参加している。

 チョウ先生は、デジタル教科書が万能というわけではないと話す。「Google Earthを使うと世界各国の写真が見られます。自分では直接行けない場所でも詳しい資料が見られるので授業に役立ちます」。

 社会科のように地図を見せて授業をする場合は、デジタル教材とタブレット端末の両方を使うことで学習効果を高められる。しかし、数学の場合は問題を解く過程が重要なので、普通の黒板に紙のノートを使う方が学習効果を上げられる場合もあるという。

 チョウ先生は、「タブレット端末やデジタル教科書は、よりよい学習のためのツールに過ぎません」と、それらを導入すること自体がスマート教育の目的になってはいけないとも話す。