Hawk\-Eyeのオペレーション・ルーム。コート上の芝の凹凸は毎日変化するため、設定の再調整が毎朝行われる。
Hawk-Eyeのオペレーション・ルーム。コート上の芝の凹凸は毎日変化するため、設定の再調整が毎朝行われる。
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 新興国などで増えるスタジアム建設の機会を捉え、放送・業務用機器やHawk-Eye社のシステムを一括受注すること。これがソニーの狙いだ。これが実現すれば、スタジアムを舞台に、競技が催されるたびに新しいコンテンツやサービスを継続的に生み出していく事業を展開できる。売り切り型のデジタル家電事業の不振に悩まされている同社にとって、スポーツ関連事業の魅力は大きい。

 プレーのデータ化は、スタジアムを訪れる観客や一般消費者を対象にしたサービスにもつながる可能性がある。実際、Hawk-Eye社のシステムは、スポーツ・ファンにとっても試合観戦での大きな娯楽の一つになっている。

 ソニーの山中氏は「スタジアムで収集したデータから生み出したコンテンツを、スタジアムの観客に提供するサービスには大きな可能性がある」と期待を寄せる。いまや多くの人が誰もが手にするようになったスマートフォンやタブレット端末などの情報機器は、コンテンツの有望な配信先になるだろう。既にクリケットでは、Hawk-Eye社のシステムで収集したデータを、戦略分析の材料として、観客のスマートフォンやタブレット端末に配信する試みが始まっている。

一般消費者向けサービスも視野に

 ソニーは今後、同社が培ってきたデジタル技術を次々とスポーツ分野に投入していく考えである。例えば、4K×2K映像関連の技術。「4K for Sportsをスローガンに、4K技術をスポーツ分野に展開する。ライブ・スポーツを4K技術で撮影したら、どのようなコンテンツを生み出せるか。そうしたテーマを追求したい」と山中氏は明かす。同社は既に、4K×2K映像対応のカメラを複数台使ってサッカーのフィールド全体を撮影し、ゲーム中の全選手の動きを丸ごと4K映像に収める取り組みを進めている。放送・業務用機材の展示会でこうしたコンテンツを披露し、商機を探っているところだという。

 プレーをデータ化して解析する技術、そしてプレーを撮影し、臨場感ある映像に変える技術。こうした複数の映像技術を組み合わることで、観る者がワクワクするような新しいコンテンツを生み出していく。この取り組みが、新しい民生機器や業務用機器を生み出し、デジタル・スポーツを推進力とする新ビジネスを生み出していく――。ソニーは今、その挑戦のスタートラインに立った。