このことを裏付ける事象が幾つかある。第1は、2号機に調査に入ったロボットが最上階の床で測定した放射線線量率が異常な高さを示したこと*10。第2は、パッキン部の漏れを想定しないと、原子炉格納容器圧力が短時間で設計圧力の2倍に達してしまう1)。第3は、福島第一原発正門で観測された放射線線量率は、ベント操作(2号機圧力抑制室の損傷もベント操作相当として含む)の時に格別に増えたわけではないこと。そして第4は、2号機圧力抑制室が損傷してから3時間後に福島第一原発正門の放射線線量率が平常時の20倍に高まったものの、この時の風向きは飯舘村とは逆方向となる北北東だったことだ8)

 以上のことから、[1]環境に放出された放射性物質の大部分は、ベント操作ではなくパッキン部からの漏洩による、[2]飯舘村の深刻な汚染については、ベント操作相当の2号機圧力抑制室の損傷による放射性物質放出が主たる原因ではない、と推測できる。

2号機圧力抑制室の損傷に3つの可能性

 続いて、[4]2号機の原子炉格納容器圧力抑制室の損傷原因について考察していこう。図3に示したウエットウエルの圧力変化を見ると、厚さ2cmの圧力抑制室は*11、3月15日の早朝6時ごろに破損したと推定できる。

 現段階では原因は不明だが、それを推察する上では3号機が参考になる。2号機と同型・同出力規模の原発でありながら、3号機の圧力抑制室には異常が見られない。一体、2号機と3号機の違いはどこにあるのか。3つの可能性を考えてみたい。

*10 報道された110mSv/hという値は、原発の現場で作業するときの値よりも1桁高い。最上階全体がこれほどひどい汚染状態にあるのは、原子炉格納容器上蓋から放射性物質を含むガスが噴出したとしか考えられない。
*11 沸騰水型原子炉格納容器のドライウエル部の壁厚は3cm。