海外でも稼げるソーシャルゲームをどう作るのか?

――目標としては、世界各地の拠点で開発されたゲームが同じMobageというプラットフォームに乗り、そこで世界中のユーザーが遊べるような形をイメージすればいいのでしょうか。

守安氏:そうです。ワールドワイドで作られたゲームについては言語を変えるだけで通用するタイトルもあるでしょうし、ある国でヒットしたタイトルであっても、他の国のカルチャーに合うように変えないといけないものもあるでしょう。いろいろなやり方に対応できるようにするつもりですが、まずは作ったゲームをワールドワイドで展開できるプラットフォームを作ることが重要です。

――国内と海外のタイトルの編成や棲み分けについては、どう考えているのですか。

「コアファンに向けたゲームにチャレンジし、何とか芽を出したい」と話す守安氏

守安氏:まず、国内と海外とでは大きく状況が異なっています。国内に関してはスマートフォンのブラウザーゲームが、我々が考えていた以上に利用されています。フィーチャーフォン用に作ったものを少しチューニングしますが、ほぼそのまま同じようにスマートフォンでも運用しており、かなりのユーザーに受け入れられています。そうしたゲームについては、2012年でも手堅く収益が見込めるでしょう。

 その一方で、ソーシャルゲームにおけるスマートフォンらしさも追及していかなければなりません。これまでソーシャルゲームを「こんなのゲームじゃない」と感じていた方々にも、家庭用ゲーム機に近いクオリティで提供でき、コアなゲームユーザーでも楽しんでもらえるスマートフォン上のソーシャルゲームを提供できると思っています。

 ただ、大きな成果が出てきたわけではありません。家庭用ゲーム機用タイトル、MMO(Massively Multiplayer Online)に近いタイトルなど、コアファンに向けたゲームにチャレンジし、何とか芽を出したいと考えています。

 海外に関してですが、先ほど申しましたように、国内と同じようなKPIの出るゲームが今のところ全くありません。それをどう生み出すかですが、当然、日本で成功したタイトルをその国の文化やし好に合わせてカルチャライズする方法も採っています。例えば、ngmocoの人間に日本に来てもらい、ユーザーインターフェースなどを一緒に考えるといったようなことですね。

 さらに海外の拠点に日本人スタッフを送り、現地で開発しているゲームに対して我々が培ったソーシャル性や分析ノウハウを注ぎ込んで、ヒットタイトルにつなげようという取り組みも行っています。こうしたいろいろな作り方を試しつつ、どの方法でも構わないので、なんとかヒットタイトルを生み出そうと努力している段階です。

――日本の成功タイトルを海外で展開するのか、それとも海外で開発するものに日本のノウハウを投入した方がいいのか、どちらがうまくいきそうですか。

守安氏:我々は日本で成功モデルを作ってきたので、思いとしては「日本から海外へ」というのがあります。日本のメンバーで作ったものが、海外で受け入れられればうれしいですよね。一方で、海外の現地のメンバーにしてもこだわりがあり、お互い自分たちがやった方がうまくいくと考えている面があります。そういう意味では、開発スタッフ同士、いい競争になっていると思います。ただ、どちらがうまくいくかは、やってみないと分かりません。

――そもそも、海外の会社はモバイルのソーシャルゲームを運用するノウハウを持っているのでしょうか。

守安氏:Facebookをやっている企業なら、少しは持っているのかもしれませんが、ほとんど持っていないというのが実情です。特にスマートフォンになると欧米であっても通信環境が日本より悪いところもあり、アプリについてもクライアント型の実装しかしておらず、サーバー側とのやり取りが発生しないものがほとんどです。

 ソーシャルゲームっぽいものだったり、ソーシャル性は全くないのにアイテム課金っぽい、実はクライアント側で閉じたようなタイトルの方が多いですね。サーバー側とインタラクティブに通信して実際にコミュニケーションを発生させ、しかもユーザーのログを追いながら中身を変えていくといったソーシャルゲームへの取り組みは、まだまだ遅れています。

 海外の開発企業は、クライアント側のノウハウは非常に持っています。その半面、サーバー側の運用やソーシャル性への対応に関してはこれからといった段階なので、そこがDeNAのバリューを出せるポイントといえると思います。

――クライアント中心に開発してきた海外の人間に、複雑な日本のソーシャルゲームの仕組みやノウハウは正確に伝わるのでしょうか。

守安氏:当然、数字があるので彼らも「これは違うな……」ということについては分かります。しかし、私も先日韓国に行って韓国版のMobageを見てきたのですが、韓国語で書かれていると何だかよく分かりません。

 逆に海外の人間が日本語の日本のサービスを見ても、おそらくイメージがつかめないと思います。こうなれば現地に行って、一緒にサービスを運用してKPIを見ながら変えていくといった経験をしないとだめです。説明しただけでは分かった感じになったとしても、きちっと日々の運用には落とし込めないでしょうね。

2012年の課題、そして球団のこと……