アジアで伸びる業務用ゲーム機市場、デジタルカードゲームや景品ゲームに可能性
――欧米の業務用ゲーム機市場の動きはどうですか。
鵜之澤氏:欧米は伸びてないかな。チャレンジはしているけど、日本の製品そのままではコスト面で通用しません。アジア向けにローコストで開発したものを持っていくと、ますます成果が出るという状況ですね。
やはり、伸びているのはアジアの新興国です。以前は最新作でなくてもよかったのですが、今はそうではありません。高級品、新製品を欲しがる傾向にありますよ。実際、上海のアミューズメント施設は、まるでバブルの頃の日本のよう。テーマパークのような身近な娯楽という位置づけで需要が伸びている感じ。
タイトル的には『アニマルカイザー』などデジタルカードゲームのジャンルがビジネスになる可能性があると思っています。あと、景品系などの“リアルもの”がアジアでは少しずつ伸びていて、可能性を感じています。日本でいう5000円、6000円のパッケージゲームや、高額なゲームハードウエアを買ったりというのは、まだまだ遠いと思いますけど、100円単位の業務用ゲーム機ビジネス市場は確実にあって、定着してきていると思います。
アジアでも運営型やアップデート型でのビジネスモデルをどれだけやっていけるかが重要でしょうね。日本同様、筐体の売り切りだけではない、様々なアプローチが必要なんだと思います。
気になるのは、中国のメーカーが力を付けてきていること。現地の展示会でも、次々と新製品がリリースされ、勢いを感じます。我々は、ゲームの面白さで勝負していかなければならないですね。
家庭用ゲームはPS3の存在が確立
――では、家庭用ゲームについてはどうでしょう。
鵜之澤氏:前中期計画(2009年4月~2012年3月)中は、ワールドワイドでの開発を強化するということで、海外に“どーん”と行ったのですが、大やけどを負ってしまいました(苦笑)。海外向け専用タイトルを、“見よう見まね”で作った感があり、まったくユーザーが求めるレベルに追いつかなかった。
今後は日本での開発に専念します。もちろん日本で作ったものを海外で出していくことは引き続きやっていきます。
――フロム・ソフトウェアと共同開発した『DARK SOULS(ダークソウル)』は海外でも好評だったようですね。
鵜之澤氏:ワールドワイドで160万本、そのうち国内で約40万本の実績となりました。国内でのパブリッシングはフロム・ソフトウェア、海外ではバンダイナムコゲームスが担当しました。『アーマード・コアV』も同じ枠組みで、海外は当社がパブリッシングします。欧州の販売網を自前で持ったので、何か良い販売アイテムがないかと探していたんです。そこに、たまたまフロム・ソフトウェアのタイトルが続いたというわけなんです。
――ほかのタイトルの動きは?
鵜之澤氏:『テイルズ オブ エクシリア』が76万本、『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』で60万本くらい。いずれもPS3のタイトルです。PS2の頃の勢いまではないけれど、家庭用パッケージソフトを販売するハードの一つとして存在が確立した感じですね。
――では、携帯型機はどうですか。昨年は「ニンテンドー3DS(3DS)」や「PlayStation Vita」が発売されました。
鵜之澤氏:3DSはさすが任天堂だと思いました。出だしの売れ行きが良くなかった状況で、1万円の値下げという勝負に出た。でも、そのおかげで、見事ワールドワイドで1400万台を達成し、きちんと世代を引き継げている。改めて敬意を表します。
任天堂のハードは、小学生などの子供たちにとって、ゲームの入門となるマストなゲーム機なのです。もし、ポケモンやマリオが遊べなくなってしまったら、若い世代のゲーム人口が減って、ゲーム業界の将来があやうくなります。3DSがきっちり巻き返したことで、ゲーム業界は生きながらえたと思いました。