ネットワーク対応になってユーザーの姿が見えてきた

――プレイステーションVitaとニンテンドー3DSの立ち上がりについてはいかがでしょうか。

和田氏:どちらも、ハードウエアとしてはいいマシンですから、その上にどういうサービスを乗せられるか、ということをもっとプッシュできれば、まだまだ広がりがあると思います。

 Vitaは画面がきれいだ、ということを推すのではなくて、今まで搭載していない機能がもっとあるのだから、それを前面に出したほうが良いのではないかと思っています。

 ニンテンドー3DSもそうなんですけど、今まで1つのタスクしかできなかったのが、マルチタスクになって、バックグランドで常時プログラムを走らせられるようになりました。それによって、ゲームの広がりがぜんぜん違うんですよ。

マルチタスクを実現したVitaや3DSは、これまでと次元の違う遊び方ができるようになる、と話す和田氏

 課金についても、どうしてもディスクやROMで売ってほしいというのがこれまででしたが、ダウンロード版が出てきたり、アイテム課金が出てきたりと、ビジネスモデルも広がりがでてきました。実は、ニンテンドーDSとプレイステーションポータブル(PSP)の時代と、3DSとVitaの時代は全く違う次元のモノとして考えてほしいと思います。

 例えば、DSですれちがい通信をする時には、そのゲームのROMが刺さった状態で、さらにスリープ状態でも電源がつけっぱなしになっています。ところが3DSがプラットフォームになると、あらかじめすれちがい通信の登録をしておけば、別のゲームのROMを刺しても、バックグラウンドでは登録済みのゲームのすれちがい通信をしてくれるようになります。

 そこには、画期的に違いがあります。もっとそういうメリットを丹念に拾っていけば、広がりはあると思いますよ。ただし、一つだけ気にしなければならないのが、スマートフォンとの競合が発生することですね。

――スマホ向けタイトルにも、年末商戦のような季節的要因はあるのでしょうか。

和田氏:売り上げがあがるという観点もありますが、マーケティング的な観点で年末商戦を使います。例えば、通常10ドルで売っているスマホ向けタイトルを、クリスマスキャンペーンで、5ドルで売ったりということができます。この場合、売り上げが一緒でも、ユーザーが倍になります。

 顧客層が倍になっているわけですから、キャンペーン終了後に、新しい追加コンテンツを出せば、今まで以上に追加ダウンロード販売の売り上げが伸びていくわけです。そういう意味で、統計上の数字ではとらえにくくなりましたが、ゲーム業界は沈んでいないというのが実情だと思います。

――クリスマスキャンペーンで安売りして、ユーザーを増やすというやり方はパッケージ販売でもできたことではないでしょうか。

和田氏:パッケージ販売の場合は、値札を作り替える費用が発生するし、キャンペーン期間についてさまざまな流通企業と交渉したりなど、ハードルが非常に高かった。ところがデジタル配信は違います。手元にある元栓(デジタル配信の価格)を調整すれば、キャンペーンなどが簡単に実現できます。

――そうしたグローバルなビジネスが進むにつれて、ユーロ危機などの外的要因が大きな問題とはなりませんか?

和田氏:昔、金融機関にいた人間(自分)からすると、5年おきにいつも“ヘンなこと”が起きています。今はユーロ危機といわれていますが、5年前にはリーマンショック。さらにその前はアジア通貨危機など、世界中で見ればいつもどこかで“ヘンなこと”が起きているのです。

 そうした問題は常にあるものだと割り切って、その中でビジネスを継続していくということを考えていかなければならないのでしょうね。その変化の波を乗り越えるのは大変な苦労を要するのですが、それを乗り越えることで、プレイヤーがふるいにかけられたり、主役が変わったりしますから。

全ゲームタイトルにソーシャルゲームの要素が入ってくる時代に