国内外に44拠点の工場を有するコマツ。同社は,その中でも「製品・生産技術の開発機能を備えるものをマザー工場と定義している」(同社生産本部大阪工場長の佐々木一郎氏)。これに該当するのは,国内4拠点,国外6拠点の計10拠点。中・大型の建設機械を生産する大阪工場もその一つだ。建設機械の製品および生産技術の開発を担う同工場は,英国,米国,中国などにチャイルド工場を有している。
同社は,チャイルド工場を抱えるマザー工場として四つのミッションを掲げている。簡単に言うと,① 製品開発,モデルチェンジなどに際してQCD(品質,コスト,供給)を作り込む② チャイルド工場にQCDを移管し,その安定化を支援する③ 調達の企画提案によりグローバルな最適調達を目指す④ グローバルで工場の活用を考え,販売機会を逃さない─ということ。グローバルな開発・生産と,それらをつかさどる司令塔としての役割を明示しているのだ(図1)。
中でも,近年の需要の高まりを受けて加わった新たな役割が④ である。チャイルド工場の需給状況と工場の操業状態の情報をマザー工場がチェックし,それに基づいて各工場のリソースを有効活用して柔軟な製品供給を実現するのだ。
例えば,南米市場の需要は旺盛だが,北米はそれほどでもないといった場合,北米の生産能力の余力を生かして南米向けに生産するといった機動的な運用を考えるわけである。以前は,消費地以外で生産することはあまり考えていなかったため,北米工場の稼働率は低いのに南米では生産が追い付かないといった状態もあった。
そのためにグローバル・クロスソーシングとして,1年に2回,各工場の担当者が集まり会議を開催している。各工場の生産能力,為替の影響などを考慮して供給量の配分を調整している。