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第1回:意地の代償(上)

高野 敦=日経ものづくり
2012/04/10 00:00
1/3ページ
出典:日経ものづくり、2008年9月号 、pp.236~239 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
2003年の東京モーターショーで,社長のカルロス・ゴーンはGT-Rの発売時期を宣言する。

 「日産自動車の伝説的なクルマである『GT-R』は,2007年にこの場で皆様に披露する予定です。新型GT-Rの開発は順調です」

 舞台は2003年の東京モーターショー。自動車メーカー各社は,プレスデー初日に報道向け説明会を設ける。日産自動車のブースにも多数の記者が集まった。記者団の目当ては,ここで初めて明かされる新情報。その胸中を見透かしたかのように,社長のカルロス・ゴーンはGT-Rの発売時期を高らかに宣言した。

 そもそもの“サプライズ”は,2年前の全く同じ舞台で用意されていた。同社は,コンセプトカー「GT-R Concept」を予告なしに出品。この年,社長に就任したゴーンは,GT-Rの復活を約束する。当時,GT-Rブランドは廃止されるという見方も根強かっただけに,この発表は国内外の耳目を引いた。

 だが,GT-Rの情報はそれ以降,完全に途絶える。そうした中で迎えた2003年の東京モーターショー。出品リストにGT-Rを想起させるものはない。多くの記者が,そして一般消費者が,GT-Rの新情報に飢えていた。このタイミングでゴーンはGT-Rの2007年発売を宣言したのだ。

「詳細は,発売が近付いた時点で話したいと思います」

 今回はそれだけ。しかし,それだけでも十分だった。瞬く間に報道各社のウェブサイトには「GT-R,2007年発売」「GT-Rの開発は順調」といった文字が躍る。これらのニュースを読んだ人は,誰もが思ったに違いない。「今まで情報は出ていなかったけど,やっぱり水面下で着々と開発は進んでいたんだ」と。

 ところが,実際にはとても順調などといえる状況になかった。なぜなら,後に開発総責任者となる人物が,この時点でGT-Rの開発プロジェクトにかかわっていなかったからだ。ゴーンの華々しい宣言とは裏腹に,開発の現場は深い霧に包まれていた。

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